本文へ移動
LINTO日本語の校正と推敲

読めそうで読めない漢字 / 第11回

「虫が集く」の「集く」、読むと秋の音が聞こえてくる

草むらのあちこちから虫の声が聞こえる夜。その様子を「虫が集く」と書くことがあります。読みは「すだく」。虫や鳥などが集まることを表し、集まって鳴く意味でも使われる言葉です。

「すだく」は一匹の鳴き声にも使う?

「虫が鳴く」と比べると、「虫がすだく」には、いくつもの虫の存在を感じさせる響きがあります。「集」の字が使われるのも、集まるという意味に関わります。

日が落ちると、庭の草むらで虫がすだき始めた。

どの虫が何匹いるかは見えなくても、鳴き声があちこちから重なって届く場面です。一匹のスズムシが鳴いていると明確に伝えたいなら、「スズムシが鳴く」と書く方が正確です。

「集く」は「鳴く」の難しい言い換えというだけではありません。虫以外では、鳥が群れ集まる様子にも使われます。もともとの集まる意味と、現在よく見かける虫の声の表現を、分けずにつなげて覚えられます。

秋を思わせるが「秋限定」の語ではない

「虫すだく夜」という表現からは秋の情景を思い浮かべやすいものの、「すだく」そのものが秋だけを指すわけではありません。季節の描写は、何が集まり、何が聞こえるかによって生まれます。

「集」の送り仮名を変えると、「集う(つどう)」「集る(たかる)」にもなります。「人が集う場所」「甘い物に虫がたかる」「草むらで虫がすだく」。同じ字でも、集まるものやその様子によって選ぶ言葉が変わります。

案内文に「参加者がすだく」と書けば、意味を調べたくなる読者もいるでしょう。普通の集合なら「集まる」で十分です。草むらから聞こえる声を文章に残したいときには「虫がすだく」が合います。同じ「集まる」でも、何を描きたいかで選べる語です。

参考:Precious.jp

自分の文章を校正する登録なしで200文字まで無料で使えます。
すべてのコラムを見る