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LINTO日本語の校正と推敲

間違えやすい日本語 / 第60回

「すごいおいしい」は間違い?「すごく」に直したほうがいい場面

「これ、すごいおいしい」。会話では意味がすぐに伝わっても、文章にすると「すごく」ではないかと迷います。標準的な形で文章を整えるなら、「すごくおいしい」とします。

ただし、「すごいおいしい」を耳にしただけで、意味の成り立たない日本語だとする必要はありません。話し言葉として使われる形です。

「すごい景色」と「すごく美しい景色」

「すごい」が名詞にかかるなら「すごい景色」。「美しい」という形容詞にかかるなら「すごく美しい景色」が基本です。「おいしい」も形容詞なので、「すごくおいしい」とつながります。

毎日新聞校閲センターの解説では、「すごい」を副詞的に使う形が、複数の辞書でどう扱われるかを比べています。辞書に使用の記録があっても、すべての場面に同じように勧めているわけではなく、俗な言い方などの注記があります。

「文法の基本形」と「会話で実際に使う形」のどちらを問われているかによって、説明も変わります。

文章で直す場合と残す場合

商品の紹介文なら「すごくおいしい」、もう少し改まった語にするなら「とてもおいしい」と書けます。感想としては、それだけより「焼き目が香ばしい」などの具体性があると伝わります。

一方、会話の引用や登場人物のせりふなら、「すごいおいしい」を残すことで話し方が表れる場合があります。すべてを同じ標準形に直すと、その人の口調まで変わってしまいます。実際の発言を引用する場合は、無断で違う言葉に変えたことにならないようにも注意します。

「すごく」の方が文章では選びやすい。けれど、会話の熱量や調子を写すために「すごい」が使われることもある。どんな文章を整えているかを見て、修正するかどうかを決められます。

「すごい量」と「すごく多い」は形が違う

名詞の前にある「すごい」まで、まとめて「すごく」に直してはいけません。「すごい量の雨が降った」の「すごい」は「量」にかかっています。「すごく量の雨」とすると、つながりがおかしくなります。

すごい速さで走る。 すごく速く走る。 すごい勢いで増える。 すごく増える。

最初と三つ目は「速さ」「勢い」という名詞を説明しています。二つ目は「速く」を、四つ目は「増える」を強めています。同じ驚きを表していても、直後に来る語に合わせて形が変わります。

また、「すごい。こんなに大きいんだ」と感嘆を独立させることもできます。この場合の「すごい」は、後ろの「大きい」にそのままかかっているわけではありません。引用を整える際には、語形だけでなく、どこで息を切って話していたかも判断材料になります。

「すごく」を「とても」に替えれば完成?

「すごくおいしい」を「とてもおいしい」にすると、少し落ち着いた調子になります。ただ、どちらも評価の強さを表す言葉で、味の特徴は説明していません。読み手が味を想像したい紹介文では、別の情報が必要です。

皮は薄く焼き上がり、かむと香ばしさが広がる。 甘さは控えめで、柑橘の酸味が後に残る。 汁にうまみがあり、最後の一口まで温かく食べられる。

こうした文に「すごく」を必ず足す必要はありません。具体的なよさが分かれば、評価の言葉が少なくても魅力は伝わります。

一方、友人へ「すごくおいしかった、ありがとう」と伝えるなら、気持ちの強さこそ大切です。文法を整える作業と、感想を詳しくする作業は別。短いお礼なのか、味を紹介する文章なのかを見て、必要な範囲で言葉を補えます。

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