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LINTO日本語の校正と推敲

正しい敬語 / 第47回

「寸志」は目上の人に渡してもいい?「心ばかり」との使い分け

「ほんの寸志です」と、目上の人に贈り物を渡してもよいのでしょうか。言葉の意味だけなら、自分の気持ちを控えめに述べています。ただ、贈答の慣習では、目上から目下への心付けなどを連想させるため、別の表現を選ぶ方が無難です。

「寸志」の「寸」は、わずかという意味

「寸志」は「すんし」と読み、少しばかりの志、またそれを込めた贈り物を表します。自分の品をへりくだって言う言葉です。

一方、会社などで上の立場の人から渡される金品を「寸志」と呼ぶ用法もあります。この慣習があるため、語義だけを根拠に「へりくだっているから誰にでも使える」とは判断しにくいのです。

目上の相手に感謝を伝えるなら、「心ばかりの品ですが、お受け取りいただけますと幸いです」と言えます。表書きも、その贈り物がお礼なら「御礼」など、用件に合うものを選べます。

もらった側は「寸志をありがとうございます」と言う?

相手が「寸志ですが」と渡してくれても、お礼では「お心遣いありがとうございます」「ありがたく頂戴いたします」で十分です。

贈る側の控えめな呼び方を、受け取る側がそのまま繰り返さなくてよいのです。「ささやかな物ですが」と言われたからといって、「ささやかな物をありがとうございます」と返さないのと同じです。

会の参加者に紹介する場面なら、「山田様からご厚志を頂戴しました」といった言い方もあります。「誰から、何をいただいたか」を感謝とともに伝えればよく、品の価値をこちらから小さく言う必要はありません。

「心ばかり」も「寸志」も、金額の安さを説明するための言葉ではありません。「大した金額ではないので」と重ねるより、「お世話になったお礼です」と贈る理由を伝える方が、相手も受け取りやすくなります。

「心ばかり」は親しい相手にも使える

お手伝いいただいたお礼に、心ばかりの品をお持ちしました。お受け取りいただけたらうれしいです。

具体的なお礼の理由を添えた言い方です。「心ばかり」は、自分の気持ちを形にしたささやかな物、という控えめな表現で、金額の小ささを確認してもらう言葉ではありません。

親しい相手なら、「この前はありがとう。ほんの気持ちですが、よかったらどうぞ」と言えます。かしこまった表現を選ぶことより、普段の関係に合う温度の言葉にするほうが、贈る気持ちは伝わりやすくなります。

祝意を伝える品なら、「ご開店おめでとうございます。お祝いの気持ちとしてお持ちしました」と、用件をそのまま言う方法もあります。どんな贈り物にも「寸志」や「心ばかり」を付けなければならないわけではありません。

会の席で受け取った心遣いを紹介するには

本日の会に当たり、山田様から温かいお心遣いを頂戴しました。皆様を代表して、お礼を申し上げます。

参加者の前で、寄せられた好意に触れる場面の例です。「ご厚志を頂戴しました」と言ってもよいですが、聞き手になじみがないと感じるなら、平易な言葉にできます。

金額や品物の詳細まで紹介してよいかは別の問題です。厚意への感謝を表すことと、贈った人が公表を望んでいるかを混同しないようにします。匿名での心遣いなら、名前を出さずにお礼を述べる方法もあります。

「寸志と書かれていたので失礼な贈り物だ」と、受け取る側が語だけで判断する必要もありません。慣習は場面によって違い、贈った本人は控えめな気持ちで書いた可能性があります。自分から贈るときには誤解されにくい表現を選び、受け取るときは込められた好意にお礼を伝えられます。

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