間違えやすい日本語 / 第139回
「棚からぼた餅」は頑張った人に使える?思わぬ幸運の言い方
「優勝おめでとう。棚からぼた餅だったね」。本人が練習を重ねてきたなら、喜ばれるとは限らない言い方です。「棚からぼた餅」は、思いがけない幸運を、苦労せずに得ることのたとえです。 幸運を喜ぶ一方で、努力の結果ではないという含みも生じます。
「たなぼた」は偶然手に入ったよい結果
「空きが出た席に、たまたまその場にいた人が座れた。本人にとっては棚からぼた餅だった」。狙って長く準備したというより、都合のよい出来事が向こうから来たような場面です。
「棚ぼた」「たなぼた」と短くすることもあります。「棚ぼたの機会」「たなぼたで手に入った」のように、思わぬ幸運をくだけて表す言葉です。
ただ、よいことが起きたらすべて当てはまるわけではありません。準備して応募し、審査を受けて選ばれたなら、本人にとって意外でも努力の結果が含まれています。「思いがけない受賞」と書けば、偶然だけに帰さず驚きを伝えられます。
自分に使うと謙遜でも他人には失礼になることがある
「今回は棚からぼた餅でした」と本人が言う場合、自分の実力を大きく見せない謙遜かもしれません。幸運な条件が重なったことを、率直に認めている場合もあります。
それを聞いた周囲が「本当に棚ぼたでしたね」と強く同意すると、実力がなかったと言われたように受け取られることもあります。自分を控えめに語る表現を、そのまま他人の評価に使うと働きが変わります。
「よい機会に恵まれましたね」「ここまで準備していたから、急な機会にも対応できましたね」と返せば、運と準備の両方を認められます。何が実際に貢献したか分からないなら、「おめでとうございます」と結果を祝うだけでも十分です。
「怪我の功名」とは失敗の有無が違う
「怪我の功名」は、失敗や何げない行為が思わぬよい結果につながることです。「棚からぼた餅」は、失敗したことを前提にしません。
「予約を間違えた会場が、結果として使いやすかった」なら、怪我の功名と表せます。「偶然、人気の会場に空きが出て予約できた」なら、棚からぼた餅に近い幸運です。どちらもよい結果ですが、そこへ至る流れが違います。
「渡りに船」は、必要なときに都合のよい助けが現れることです。何でもよいから幸運だったのではなく、困りごとや希望にぴったり合うことを強調します。手伝いを申し出てくれた相手には、「渡りに船の申し出でした」と感謝を表す方が合う場合があります。
結果を報告するなら何が偶然だったかを示す
「棚ぼたで担当になりました」だけでは、なぜ選ばれたかが分かりません。引き継ぎなら、「前の担当者が都合で外れたため、急きょ担当することになりました」と具体的に伝える方が役立ちます。
「棚ぼたの勝利だった」と書く場合も、相手のミスがきっかけだったのか、条件が有利になったのかを説明できます。勝った側が何もしていなかったと断定する前に、それまでの経過を見たいところです。
成功を運だけに帰すことも、全部を努力だけに帰すことも、実際の出来事を単純にしすぎる場合があります。「空きが出たことは偶然でしたが、必要な準備は以前から済ませていました」と書けば、二つを分けられます。
「棚からぼた餅」を期待する、という冗談を言うことはできます。ただ、その言葉を他人の成果へ向けると、努力を軽く見る響きが加わり得ます。驚きを伝えたいだけなら「予想外のよい知らせ」、手助けへのお礼なら「ちょうど困っていたので助かった」と、目的に合う言葉を選ぶと確実です。