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LINTO日本語の校正と推敲

読めそうで読めない漢字 / 第68回

「佇む」は何と読む?ただ「立つ」だけではない情景の言葉

「佇む」は「たたずむ」と読みます。しばらく立ち止まり、じっとその場所にいることです。「橋のたもとに佇む人」と書くと、単に立っている姿だけでなく、そこにとどまっている時間まで感じられます。

「立つ」にしばらくの時間が加わる

「立つ」は、座っていない姿勢や、立ち上がる動作を広く表します。「椅子から立つ」「入口に立つ」のどちらにも使えます。「佇む」は、立ち上がる瞬間をいう語ではなく、そこにしばらくとどまっている様子に向きます。

「佇む」は、その場所を離れず、しばらくじっとしている様子を表します。 「改札前に立って切符を探した」なら短い動作の説明です。「改札を出たところに佇み、駅前の景色を眺めた」なら、移動を止めたひとときが描かれます。

必ず悲しんでいる、必ず物思いに沈んでいるという意味ではありません。「花壇の前に佇んで、咲いた花を見比べた」というように、穏やかに見ている場面にも使えます。心情は周りの文から読み取るもので、「佇む」の一語にすべて含まれているわけではありません。

「佇」の字と「たたずまい」の関係

「佇」は、立ち止まることに関係する字です。人偏が付いていることからも、人の姿を表す語として覚えやすいでしょう。「たたずむ」は現代仮名遣いでは「ず」で書きます。「たたづむ」とはしません。

「佇まい」は「たたずまい」と読み、立っている様子や、そこにあるものの姿・雰囲気を表します。「古い家並みの佇まいが残る」と言えば、家が並ぶありさまや、その場所の感じを述べています。

古い文章では「佇む」がその辺りをうろつく意味で使われることもあります。現代の「じっといる」と反対に見える場合も、古い用例の意味の幅によるものです。現在の文章を自分で書くときには、一般的なしばらくとどまる意味で使うと伝わりやすくなります。

「立ち尽くす」「突っ立つ」と比べる

「立ち尽くす」は、動けず、いつまでも立っている様子を表します。「知らせを聞いて立ち尽くした」なら、驚きや衝撃で動けない状態を想像しやすくなります。「佇んだ」では、その衝撃の強さまでは必ずしも表せません。

「突っ立つ」は、何もせず立っている様子を、ややぞんざいに述べる言い方です。「入口に突っ立っていた」なら、邪魔になる位置で動かずにいるという批判を感じさせる場合があります。「入口に佇んでいた」とすると、人物を静かに眺めるような描写になります。

「雨上がりの庭に佇む」「閉まった店の前に佇む」「作品の前にしばらく佇む」は、それぞれ自然な用例です。周りの情景や、何を見ているかを添えると、その場所にとどまる理由を描けます。どの人物にも同じ寂しさを足す必要はありません。

建物が「佇む」は間違い?

「路地の奥に古い喫茶店が佇む」という表現も見られます。建物が人のように立ち止まるわけではありませんが、その場所にある姿を、人の姿になぞらえた比喩として理解できます。「山のふもとに佇む小さな宿」なら、周囲との関係や落ち着いた情景を描く言い方です。

ただし、所在地を正確に案内したいだけなら「路地の奥にあります」で足ります。「佇む」を入れたから、その建物が歴史的であるとか、静かな環境にあるとかいう事実が保証されるわけではありません。紹介文では、実際の立地や様子に合うか確かめたいところです。

「凛とした佇まい」「落ち着いた佇まい」も、具体的な姿が伴ってこそ伝わります。「背筋を伸ばし、客の話を最後まで聞く」と動作を添えれば、人の印象が見えてきます。佇むという言葉は、場所と姿、そこに流れる短い時間を述べるときに力を発揮します。

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