読めそうで読めない漢字 / 第64回
「罷免」は何と読む?「辞任」とは誰が決めるかが違う
「罷免」は「ひめん」と読みます。職務を辞めさせることです。「大臣を罷免する」という場合、大臣本人が自分から辞めるのではなく、権限を持つ側がその職を離れさせることを表します。「罷」の字に含まれる「能」につられて「のうめん」とは読みません。
「罷」はやめることに関わる字
「罷」には、やめる、やめさせるという意味があります。「免」は、ある役目などから外す、免じることに関係します。「罷免」は二文字がともに職を離れさせる意味につながる熟語です。
「罷免する」「罷免される」「罷免を求める」のように使います。「罷免された人」と「罷免を求められた人」は同じ状態ではありません。求める声があるだけなのか、実際に職を外されたのかを読み分ける必要があります。
「罷」は日常の文章で目にする機会が少ないため、字の形だけで覚えるより「ひめんする」というまとまりで読むほうが使いやすいでしょう。「免職」も近い意味で使われますが、それぞれの制度でどの用語を採るかは、一般語の説明とは別に確認されます。
「辞任」は本人が辞めること
「罷免」は職を辞めさせること、「辞任」は本人が役職を辞めることです。 「委員が辞任した」といえば本人が退く形で、「委員が罷免された」といえば外部の権限によって職を離れた形になります。
たとえば「本人は辞任を否定していたが、その後、罷免された」という文では、本人の意思と職を外す判断が一致していなかったことを表せます。「本人が罷免しました」とだけ書くと、本人が誰を辞めさせたのかという文になり、自分から辞めたことは伝えられません。
もっとも、辞任という言葉が使われていても、周囲から辞めるよう求められていた場合はあります。「辞任だから完全に本人の自由意思、罷免だから必ず本人が反対していた」と、実際の事情まで一語だけで決めないことも大切です。
「解任」「更迭」と比べる
「解任」は任務を解くことで、役職から外す点で罷免と重なります。「更迭」は「こうてつ」と読み、ある地位の人を別の人へ代えることです。辞めさせることに注目する罷免と、入れ替えに注目する更迭では、述べている側面が違います。
「担当責任者を解任した」と書くと、その人が役を外れたことが中心です。「担当責任者を更迭した」では、責任者の交代が中心です。「罷免」は特に公的な職の話で使われ、改まった語感があります。近い語だからといって、公式の発表に使われた言葉を自由に置き換えると、手続きや経緯を違えて伝える場合があります。
「罷免」は最も重く、「更迭」はその次、といった単純な順位も付けられません。何の職について、どんな権限や手続きで行われたかが重要で、読み方の知識だけで処分の性質まで判断することはできません。
ニュースの文を正確に読み取る
「議会で罷免を求める意見が出た」は、意見が出たという事実です。「罷免が決まった」ではありません。「罷免の可能性に言及した」も、すでに職を失ったことを意味しません。見出しが短いときほど、その後に続く動詞まで確かめたいところです。
「罷免された後も活動を続けた」という文なら、特定の職を離れたことと、その人がすべての活動をやめたことは別だと分かります。役職、雇用、団体への所属などを一つにまとめて読まないほうが正確です。
また、日常の小さな役割変更を「罷免」と呼ぶと、厳しい処置や公的な判断のように響きます。「次の催しでは受付担当を交代する」なら、それをそのまま書けば足ります。「ひめん」という読みを覚えたうえで、本人が辞めたのか、誰かが辞めさせたのか、実際の決定なのか要望なのかを区別すると、似た人事語に振り回されずに読めます。