読めそうで読めない漢字 / 第63回
「更迭」は「こうてつ」。辞めることと交代させることの違い
「更迭」は「こうてつ」と読みます。ある地位や役目にいる人を、別の人に代えることです。「監督を更迭した」といえば、監督を交代させたという意味になります。「こうそう」と読むわけではなく、「迭」は「てつ」です。
「更」と「迭」はどちらも交代に関わる
「更」には改める、変えるという意味があります。「迭」は入れ替わることです。「更迭」は、人を入れ替える意味の字が組み合わさった熟語で、特にある役職の前任者と後任者の交代に使われます。
「更新」の「更」は見慣れていても、「迭」は出会う機会が限られます。「送」と似た部分がありますが、別の字です。「更迭」を読むときは、役職を辞める人だけでなく、その立場が別の人へ移ることに目を向けると意味がつかめます。
「更迭」は役職者を交代させることを表し、「本人が自分から辞めた」という意味ではありません。 ただし、その交代がどんな事情で行われたかまで、単語だけで確定するわけではありません。
「更迭」は不祥事があったときだけ?
現代のニュースでは、問題発言や不適切な対応、成績不振などを受けて、責任者を代える場面でよく使われます。そのため「更迭」と聞くと、責任を取らされた交代を想像しやすい言葉です。
しかし、語の基本の意味は役職者の交代であり、特定の不祥事を必須条件としているわけではありません。「責任者が更迭された」という一文だけから、違法な行為があったと読み足すことはできません。理由を知るには記事の説明が必要です。
また、定期的な人事異動を「更迭」と書くと、単なる交代以上の問題があったように受け取られることがあります。通常の案内なら、「4月から担当者が交代します」「新しい館長が就任します」と書くほうが、余計な含みを加えずに済みます。
「辞任」「解任」「罷免」を並べて読む
「辞任」は、役職にある本人が辞めることです。「監督が辞任した」なら本人の側から辞める形を示します。「監督を更迭した」では、交代させる側からの説明になります。実際には辞任を求められる場合もあり、詳しい経緯は前後の文で確かめます。
「解任」は、任務や役職を解くことです。「更迭」は他の人に代えることに重点があり、「解任」は現在の人をその役から外すことに重点があります。同じ出来事について、両方の言葉が使われる場合もあります。
「罷免」は「ひめん」と読み、職務を辞めさせることです。公的な職についての説明で見聞きする語ですが、具体的な制度の手続きは別に定められます。これらの言葉を軽い順から重い順へ一列に並べれば、人事の事情が全部分かるわけではありません。
例文では主語と目的語を確認する
「運営側は、説明不足を理由に責任者を更迭した」という文では、運営側が交代を決めています。「責任者は更迭され、後任には別の部門の担当者が就いた」なら、交代される人の側から述べています。
「責任者は更迭した」と書くと、その責任者が誰か別の人を交代させたのか、本人が交代させられたのかが曖昧です。本人が外されたのであれば、「責任者は更迭された」と受け身にする必要があります。「辞任した」と混ぜないようにしたいところです。
「前任者の更迭後も方針は変わらなかった」という文からは、人が代わったことと方針が変わったことは別だと分かります。更迭という強い印象の語に引かれて、組織全体が大きく変わったとまで想像しないことも大切です。誰が、誰を、どの役から代えたのか。そこを具体的にたどると、人事のニュースを落ち着いて読めます。