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LINTO日本語の校正と推敲

間違えやすい日本語 / 第84回

「適当にお願いします」は雑でいいという意味?「適切」との違い

「適当に選んでおいて」と頼まれたら、よさそうなものを慎重に選ぶべきか、深く考えずに決めてよいのか。「適当」には、条件に合う、程度がほどよい、いい加減であるという意味があります。 雑な対応を指す場合だけが正しいのではありません。複数の意味があるからこそ、指示では説明が必要になります。

「適当な人」はふさわしい人?無責任な人?

「この役を任せるのに適当な人を探しています」なら、役にふさわしい人という意味です。「彼は適当な人だから任せない方がいい」と言えば、責任感に欠けるという評価になります。同じ「適当な人」でも、前後によってほとんど逆の受け止め方になります。

人を紹介する文で「適当な方が見つかりました」と書くこと自体は誤りではありません。ただ、短い文だけを読まれるなら、「経験のある方が見つかりました」「今回の役に合う方が見つかりました」と書くと、よい意味であることが伝わります。

「何でもいいから誰かを」という気持ちではない場合には、どの条件に合っているのかまで言えると、頼まれる人にも事情が分かります。

「適切」と言い換えれば済む場面

「状況に合った適切な対応」「質問に対する適切な回答」の「適切」は、その場の事情や目的によく合っていることです。「適当」と違って、いい加減という意味で読む心配が少ない語です。

「問い合わせには適当に答えてください」が、質問に合う正確な回答を求める文なら、「問い合わせには適切に答えてください」と替えると意図に近づきます。一方、「担当者の連絡先だけ伝えればよい」という具体的な対応を求めるなら、その内容まで書いた方が役立ちます。

「適切に処理してください」も、適切さの基準を知らない相手には難しい指示です。誤解の少ない単語を選ぶことと、相手が動けるだけの情報を渡すことは、別に考える必要があります。

ほどよい量は「適量」や具体的な目安で示す

「適当な大きさに切る」は、いい加減に切るという意味とは限りません。料理なら、食べやすい、火が通りやすいなど、その目的にちょうどよい大きさを指します。「適当な間隔を空けて座る」も、ほどよい距離を取るという意味で成り立ちます。

ただ、経験によって思い浮かべる大きさや間隔が違うことはあります。初めて作る人向けなら「一口大に切る」、座席の案内なら「隣の方と一席空けてお座りください」と示せます。

「適当な量」と「適量」はどちらも使えますが、「適量」に替えただけで量が具体的になるわけではありません。小さじ一杯なのか、好みで加えるのか。数値が必要な場面と、相手の好みに任せてよい場面を分けて書きます。

本当に自由に選んでよいならそう伝える

「資料の表紙は適当に選んでください」と言われても、見栄えまで任されたのか、候補のどれでもよいのか分かりにくいことがあります。「三案とも確認済みなので、どれを使っても構いません」なら、自由に選べる範囲がはっきりします。

「今は仮の名前でよいので、思い付いたものを入れてください」も、完成度を求めていないことが伝わる依頼です。「適当でいい」と言ってから、あとで細かな条件を足すと、任せたはずの範囲が食い違います。

一方、「適当な返事でごまかされた」のように、誠実でない対応を批判する文なら、「適当」が意図に合っています。悪い意味を消すためにすべて「適切」へ替えるのではなく、自分がどの意味で書いているかを前後の文で確かめたいところです。

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