間違えやすい日本語 / 第26回
「取りつく暇もない」と「取りつく島もない」はどちらが正しい?
何かを頼もうとしても相手が応じてくれないときは、「取りつく島もない」が慣用句の形です。 「取りつく暇もない」では、話を聞いてもらう足掛かりがないという意味と、時間がないという意味が混ざってしまいます。
説明を始める前に断られ、取りつく島もなかった。
相手に話を聞いてもらう余地がなかった、という意味です。
「取りつく島もない」の「島」は頼りにするところ
デジタル大辞泉の「取り付く島」は、頼りとしてすがるところを指すと説明しています。多くは否定の形で使い、「取りつく島がない」「取りつく島もない」のどちらも書けます。
「取り付く」「取りつく」の違いは表記の選び方ですが、「島」を「暇」に替えると、慣用句の別の形にはなりません。漢字の変換を整えるだけでなく、「とりつくしま」と読む言葉です。
相手が冷淡で、とても相談を持ち掛けられない場面や、頼みを聞く気がない場面に合います。単に相手がその場にいなかった場合には、「会えなかった」「話す機会がなかった」の方が正確です。
忙しくて話せなかっただけなら「時間がなかった」
例えば、会場の片付けで全員が動き回っていて、担当者へ相談できなかったとします。その担当者が冷たかったわけでなければ、次のように書けます。
片付けに追われていて、担当者に相談する時間がなかった。
「取りつく島もなかった」と書くと、相手が拒んだような評価が加わります。忙しさが原因なのか、話を受け付けない態度が原因なのかを分けると、無用に相手を責める文になりません。
「話しかける隙がなかった」なら、相手が忙しい場合にも、会話の切れ目がなかった場合にも使えます。冷たさまで言いたくないときの候補になります。
報告では相手の言葉を書く方法もある
交渉の結果を「取りつく島もありませんでした」と報告すると、難しかったことは伝わりますが、何を断られたのかまでは分かりません。
「日程の変更を相談しましたが、『変更は受け付けられない』との回答でした」と書けば、実際の返事を伝えられます。相手の態度を説明する必要があるときに「取りつく島もない」を使い、判断に必要な内容は別に残せます。
慣用句の字は「島」。そのうえで、今回は冷たい応対を言いたいのか、話せる時間がなかっただけなのかを確かめると、使う文が決まります。