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LINTO日本語の校正と推敲

正しい敬語 / 第86回

「当方」は偉そう?「私ども」「こちら」との使い分け

「当方」は、自分または自分の側を表す言葉です。単語自体が相手を見下す表現ではありません。ただ、個人なのか部署なのか会社全体なのかが曖昧になりやすく、会話によっては事務的に感じられることがあります。

「私ども」「こちら」「弊社」も、全て同じ意味で入れ替えられるわけではありません。返事をする人と、責任を持つ範囲が分かる言葉を選ぶと、丁寧さと分かりやすさを両立できます。

「当方」は文書で自分側を示す

当方からは、佐藤と山田の2名が参加します。

相手側と自分側がある会議の調整なら、「当方」の範囲が分かりやすい文です。個人の連絡でも「当方は土曜日の受取りを希望します」と使えますが、誰が希望しているか明らかなら「土曜日の受取りを希望します」だけでも足ります。

「当方の判断に従ってください」と言えば強く響きます。しかし、強さの原因は「当方」だけではなく、従うよう求めている内容にあります。「私どもの判断に従ってください」に替えても、その点は変わりません。

相手にも判断してもらう場面なら、「こちらではA案を希望しています。ご都合はいかがでしょうか」と、意向と質問を分けられます。

客に向けた「私ども」と会社の「弊社」

私どもで会場までご案内します。受付でお声をお掛けください。

「私ども」は自分を含む側を控えめに述べる言葉で、人が対応する場面に使えます。担当チームなのか、案内をする二人なのかが前後で分かれば、会社名を毎回言わなくても伝わります。

会社全体のサービスや方針なら、「弊社では」「当社では」と明示した方が範囲を取り違えません。自分個人がまだ確認していないことを、「弊社では対応できません」と会社の判断として伝えるのは避けたいところです。

私の担当範囲では判断できないため、確認の上、お返事します。

この文なら、会社が断ったのではなく、担当者が確認を要する状態だと分かります。自分個人の返事と、組織としての判断を混ぜないことが重要です。

「こちら」は会話に便利だが指す先に注意

電話や打合せでは、「こちらで確認します」「こちらから伺います」が使いやすい表現です。ところが、場所と担当者が同時に話題に上ると、「こちら」が何を指すか迷う場合があります。

書類はこちらに送ってください。

これだけでは、今話している人のメールなのか、会場なのか、会社の代表窓口なのかが不明です。

書類は、私からお送りしたメールへの返信でお送りください。

原本は、青葉会館の受付へお届けください。

宛先を明示した二つの例です。「こちら」を難しい敬語に替えるより、受取り先を具体化する方が役立ちます。複数の会社が参加している連絡では、社名や担当者名を使うと転送後も理解できます。

断る文では主語をぼかさない

「当方では分かりかねます」とだけ返すと、誰なら答えられるのか分かりません。引き継げる先があるなら、「会場の設備については、施設管理の担当からご案内します」と伝えられます。

こちらが対応できない内容なら、その範囲も明示します。

当店では修理を承っておりません。購入後の修理については、メーカーの窓口をご案内します。

店全体として受けていないことを示した文です。問い合わせ先を案内できない場合は、分からないまま「そちらで確認してください」と投げず、把握している範囲を答えます。

誰が話しているか既に分かっている短い連絡なら、「明日までに確認してお返事します」で十分です。毎文の冒頭に「当方」を入れるより、担当と約束する内容を明確にできます。

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