正しい敬語 / 第85回
「弊店」と「当店」はどう違う?お客様に店を紹介するときの言い方
「弊店」は自分の店をへりくだって呼ぶ言葉で、「当店」は、この店、私たちの店を示す言葉です。どちらも客への文章で使えます。「当店」は敬語ではないから失礼、ということはありません。
個別のお礼やおわびでは「弊店」、営業時間や商品の案内では「当店」が使いやすい選び方です。ただし、文の目的に合わせた目安であって、必ず書き分けなければならない規則ではありません。
お客様へのお礼やおわびに「弊店」
このたびは弊店をご利用いただき、誠にありがとうございました。
店から個別のお礼を送るときの例です。自分の店を控えめに述べながら、相手の利用に感謝しています。新しく訪れた客なら、「いつも」を機械的に付けない方が、その人との関係に合います。
弊店からお送りした品に不足があり、申し訳ありません。不足分は本日発送いたします。
おわびの場面では、「弊店」という言葉だけで丁寧にしたつもりにならず、何が起きたか、どう対応するかを伝えます。「弊店の不手際」とだけ書くより、不足や誤りを具体的にした方が、相手も対応を確認できます。
店主個人として送る場合でも「弊店」は使えます。法人でなければ「弊」を付けられない、ということではありません。
案内板や商品紹介には「当店」
当店の営業時間は、午前10時から午後7時までです。
こちらの商品は、当店でもお取り寄せできます。
「当店」は、案内の対象となる店を示しています。店を自慢しているわけではないので、「弊店」に直さなくても丁寧な文になります。
案内板なら、店名が明らかな場所で毎回「当店」を入れる必要もありません。「営業時間 10:00〜19:00」で情報を伝えられます。個別のメールでは、「青葉書店では、来週から展示を行います」と店名を使う方が、転送されても分かりやすい場合があります。
自店をへりくだるなら「弊店」、どの店の案内かを示すなら「当店」が基本です。
相手の店には「貴店」が使える
他の店へ改まった文書を送るなら、その店を「貴店」と呼べます。
貴店でのお取り扱いについて、ご相談したくご連絡いたしました。
ただし、電話で突然「貴店では」と言うより、「そちらのお店では」「青葉書店様では」と言った方が聞き取りやすいこともあります。自分の店と相手の店を同じ文で扱うなら、店名を使うと関係が明確です。
| 指している店 | 文の例 |
|---|---|
| 自分の店を控えめに示す | 弊店へのご来店、ありがとうございました |
| 自分の店の案内をする | 当店では予約を受け付けています |
| 相手の店を立てる | 貴店の催しについて伺いたく存じます |
相手の店舗名に「様」を付けた場合、「御中」まで重ねる必要はありません。宛名は店全体か担当者個人かを分けて記します。
チェーン店では店舗と会社を混同しない
「弊店で確認します」と返事をした場合、相手はその店舗が対応すると理解します。本部の判断が必要なら、「本部に確認し、当店からあらためてご連絡します」と担当の関係を示せます。
「弊社」は会社全体、「当店」は個別の店舗を示すことがあります。「弊社では返品を受け付けています」と会社全体の方針を案内するのか、「当店でお預かりします」と窓口を伝えるのかは、内容が違います。
「弊店」「当店」を文中で交互に使って格調を整える必要はありません。どの店舗が案内し、どこへ行けば対応してもらえるのかが分かることを優先できます。