「が」「で」でだらだらつなげない|結論を待たせない日報の書き方
先に言ってしまうと、「が」で文をつなぐこと自体は間違いではありません。辞書で接続助詞の「が」を引くと、逆接のほかに、前後を軽くつなぐだけの用法も載っています。「先日もお伝えしましたが、」「少し長くなりますが、」のような前置きの「が」がそれです。それでも日報の本文に「が」が続くと読みにくい。理由は書く側ではなく、読む側の頭の動きにあります。
在庫の補充を進めましたが、欠品していた商品はすべて棚に戻せました。
「進めましたが」まで読んだ人は、次に来るのは悪い知らせだと一瞬構えます。進めたけれど間に合わなかった、進めたけれど一部は入荷待ち。そういう続きを待ち受けて読み進めると、出てくるのは「すべて戻せました」という順当な報告です。身構えた分が無駄になり、文の向きを文末まで保留させられた感じだけが残ります。
在庫の補充を進め、欠品していた商品はすべて棚に戻せました。
「が」を外して連用形でつないだだけで、上司は身構えずに読めます。「が」は、読む人に「この先で話が折れる」と予告する言葉で、折れない文に付けると予告だけが空振りします。 一回なら気にならなくても、日報全体で五回も六回も空振りすると、読む側はそれだけで疲れます。
読点を足しても、逆接の顔は消えない
発注書は提出しましたが、控えはこちらで保管しています。
提出と保管は対立していません。ただ「提出しましたが」と読めば、提出はしたけれど何かあったのか、と一度は読めてしまう。ここで「提出しましたが、」と読点を打っても、逆接に見える顔はそのままです。読点は切れ目を見せる記号で、前後の関係までは変えません。直すならつなぎ目そのものを変えて、「発注書を提出し、控えはこちらで保管しています」。これなら、二つの事実が並んでいるだけだと素直に読めます。
見分けには簡単な方法があります。その「が」を「けれど」に置き換えて、意味が通るかどうかを試す。 「提出したけれど、控えは保管している」は通りません。通らない「が」は逆接ではないので、連用形か「て」でつなぎ直す。「見積もりは送ったけれど、返事はまだ来ていない」なら通るので、その「が」は残す。送信前に本文の「が」を検索して一つずつ試しても、一分とかかりません。
「で」「おらず」「あり」の後ろに、理由が隠れる
つなぎ目で関係が曖昧になるのは「が」だけではありません。「で」「おらず」「あり」も、前後が理由なのか並列なのかをはっきりさせないまま、文を先へ伸ばします。
朝はクレーム対応で、午前の納品チェックが終わっておらず、午後にずれ込む見込みです。
「クレーム対応で」は、チェックが終わらなかった理由なのか、朝の様子をただ添えただけなのか。「終わっておらず」は理由の続きなのか、単なる状態なのか。読んでいる人はそれを判断しながら進み、肝心の「午後にずれ込む」は文末まで出てきません。書いた本人には因果がはっきりしているので、この曖昧さには気づきにくいところです。
朝はクレーム対応が続いたため、午前の納品チェックがまだ終わっていません。完了は午後にずれ込む見込みです。
「で」を「続いたため」に替えて理由だと示し、「おらず」は「終わっていません」と言い切り、見込みは別の文に分けました。理由を「ため」で表に出すと、何が原因で何が結果なのかを相手が組み立て直す手間がなくなります。 分けたのは二文まで。「ずれ込む見込みです。理由はクレーム対応です。」と三つに刻むと、今度はぶつ切りで読みにくい。
一文のままでほどける場合もあります。「急ぎの出荷が二件あり、棚卸しは午後に回しました」は、「あり」を「あったため」に替えれば、「急ぎの出荷が二件あったため、棚卸しは午後に回しました」と一文のまま理由が立ちます。分けるか、一文で済ますかは、理由の長さで決めればよいと思います。短い理由なら一文の中へ、長い説明なら外へ。
「が」が二つ続いたら、片方だけ切る
試食の準備は整いましたが、声かけの担当はまだ決まっていませんが、開始時間には間に合う見込みです。
一つの文に「が」が二つあると、向きが二度変わるように見えて、どこが本当の折れ目か分からなくなります。「けれど」で試してみると、一つ目の「準備は整ったけれど、担当は未定」は、言えなくはないものの、整ったことと未定なことは別々の報告で、対比というほどではありません。迷うところですが、並べているだけの「が」と見てよさそうです。二つ目の「決まっていないけれど間に合う」は、はっきり通る逆接です。
試食の準備は整いました。声かけの担当はまだ決まっていませんが、開始時間には間に合う見込みです。
並べているだけの「が」を句点に替え、本当の逆接は残す。 全部を切ってしまうと、「決まっていないのに間に合う」という大事な含みが消えます。
動作が「て、」「で、」で三つ以上連なるときも、同じ目で見ます。「返品は専用の伝票で処理して、システムにも登録して、棚に戻しました」は、三つの作業が同じ調子で並び、どれが中心か読みながら振り分ける形です。ただしこれは一連の近い作業なので、三文に割ると細切れになります。「返品は専用の伝票で処理し、システムにも登録して棚に戻しました」と、調子を少し変えるくらいで落ち着きます。
残す「が」、直す「が」
逆接の「が」を全部避けようとすると、今度は前後の関係が伝わらなくなります。「間に合う見込みですが、担当はまだ決まっていません」の「が」は、読んだ人に注意を向けさせる大事な合図で、ここを連用形にすると報告の緊張感が消えます。直す対象は、逆接でないのに逆接に見える「が」と、理由なのに理由だと分からない「で」「おらず」「あり」 に限ります。関係さえ見えていれば、一文が少し長くても上司は迷いません。
冒頭に書いた前置きの「が」も同じで、「お疲れさまです。本日の報告ですが、」のような挨拶の「が」まで直す必要はありません。日報で問題になるのは、本文の事実と事実の間に挟まった「が」のほうです。
送信前に「が」を検索して、「けれど」で読んでみる。通らなければつなぎ直す。それだけの習慣で、日報の結論はかなり早く相手に届くようになります。
出す前に、さっと校正
「この使い方、合っているかな」と迷ったら、書いた文章をLINTOに貼って校正してみてください。誤字や表記のゆれ、読みにくい言い回しまで、無料でまとめて見直せます。メールを送る前、記事を公開する前、SNSに投稿する前のひと確認に、どうぞお役立てください。
この連載の記事
- 前の回:曖昧な言葉を具体的にする
- 次の回:漢字とかなのバランスを整える
- 文章力編の入口:わかりにくい文章の特徴と直し方
- LINTOコラムの一覧はこちら。