わかりにくい文章の特徴と直し方|読みにくさはどこで生まれる?
発送の遅れを詫びるメールを送ったら、お客さんから「それで、商品はいつ届くのでしょうか」と返事が来た。通販のサポートをしている人には、覚えのある場面かもしれません。送った本人は、ちゃんと書いたつもりです。それなのに、肝心なことが伝わっていません。
このたびはお届けが遅れており、大変申し訳ございません。ご注文いただいた商品につきましては、配送業者で荷物の追跡情報が一時的に止まっていたため状況の確認にお時間をいただいておりましたが、本日あらためて発送いたしました。
お詫び、経緯、そして最後に「本日あらためて発送いたしました」。けれど、いちばん知りたい一言が最後に来るので、そこへ着くまでは、お詫びと、止まっていた追跡情報の話を抱えて読むしかありません。読み終えて頭に残るのは、発送したことより「何か止まっていたらしい」という印象のほうかもしれません。
ご注文いただいた商品は、本日あらためて発送いたしました。このたびはお届けが遅れており、大変申し訳ございません。配送業者で荷物の追跡情報が一時的に止まり、状況の確認にお時間をいただいていたためです。
書いてあることは同じで、順番が違います。先に「発送した」と分かれば、あとのお詫びも経緯も、落ち着いて読めます。わかりにくい文章とは、読み手が意味を取るために、余計な作業を求められる文章です。 この連載「文章力編」では、その余計な作業がどこで生まれるのかを、場所ごとに分けて見ていきます。
書いた人には、読みにくさが見えない
さきほどのメールを書いた人は、読みにくいとは思っていなかったのでしょう。それも無理はなくて、書き手は追跡が止まった経緯も、再発送した事実も、どちらも知ったうえで書いています。頭の中では全部つながっているので、どの順番で並べても、自分には意味が通って見えます。
受け取る側は、そうはいきません。本文に出てきた順番でしか、情報を受け取れないからです。まだ結論を知らないまま一行目を読み、書き手が頭の中だけで補っている前提があれば、それを自分で埋めながら進みます。この埋め合わせの手間が、読みにくさの正体です。だから「文章が苦手」と感じるとき、語彙やセンスの問題に思えても、原因はたいていもっと具体的な場所にあります。読みにくさの多くは才能の話ではなく、観察すれば見つかる場所にあります。
見つけるこつは、書いた直後に読まないことです。一晩置いてから、あるいは送る相手の顔を思い浮かべながら、その人が知らないことだけを頼りに読んでみると、自分が補っていた前提が見えてきます。急ぎのメールで一晩は置けない、という場合は、文頭から順に「ここまでで相手は何を知ったか」を追うだけでも違います。
どこで止まったかを、三つに分ける
読んでいる途中で止まる場所は、覚える・推測する・戻るの三つに分けると、原因の見当がつきます。 一文が長くて、主語や条件を文末まで覚えておかされる。「適切に」「なるべく早く」のような言葉で、程度を自分で推測させられる。修飾語がどこにかかるのか分からず、前に戻って読み直す。
自分の文章で試すなら、一段落を読み返して、目が止まった文に印をつけ、その止まり方が三つのどれだったかを書き添えてみると、直す場所の見当がつきます。印の種類ごとに、連載の回を用意しました。気になる症状の回から読んでいただいて構いません。
覚える負担が重いときは、まず一文が長すぎる文章を短くするからどうぞ。述語を数えて分ける、という手順を扱っています。削れる言葉を削るは文そのものを軽くする回、「が」「で」でだらだらつなげないは、切るべき場所で切れていない文を扱う回です。
推測の負担は、言葉の精度の問題です。「適切に対応します」の適切がどの程度なのかは曖昧な言葉を具体的にするで、同じ言葉を繰り返すうちに中身がぼやける文は同じ言葉の重複を減らすで、数字や場面で思い浮かべてもらう書き方は具体例・数字・エピソードで伝えるで取り上げます。
戻る負担は、文の骨組みが崩れたときに起きます。種類がいちばん多く、回の数も多めです。文頭の「誰が」と文末の「どうした」が遠い主語と述語が離れた文を直す、「早めに」がどこにかかるのか決まらない係り受けのねじれ・修飾語の置き方、条件の中に条件が入る入れ子構造の文をほどく、一つの述語に無理をさせる述語を使い回さない、誰がした動作か分からなくなる受け身と能動を混ぜない。それぞれ別の角度から、骨組みを立て直します。
このほかに、文の区切りと表記の回があります。読点の打ち方で意味を切る、「てにをは」で意味が変わる、漢字とかなのバランスを整えるの三本です。一文より大きな、文章全体の組み立てを扱うのは、並列・対比をそろえる、書く前に主眼と骨子を決める、読み手を待たせない書き出し、段落の分け方と話のまとめ方、そして仕上げの推敲の順番を決めるです。
直す順番は、言葉より骨組みが先
文章を直そうとすると、つい言い換えから探したくなります。「ご確認ください」を「ご確認いただけますと幸いです」にするとか、「思います」が多いので減らすとか。ただ、読みにくさが骨組みから来ているなら、単語をどれだけ上品にしても、主語と述語が遠い文は遠いまま、結論が見えない文は見えないままです。直すなら、表現より先に構造からです。
大づかみには、この文章でいちばん伝えたいことと、相手にしてほしいことを先に決める。そのうえで、一文に詰まった役割を分け、主語と述語を近づける。言い換えや語尾を整えるのは、骨組みが立ってからでよいと思います。見直す順番そのものは、連載の最後の推敲の順番を決めるで扱います。
あわせて、どこまで直すかも考えておきたいところです。語尾や言い回しを自分の好みにそろえても、読みやすさはほとんど変わりません。手を入れる価値があるのは、誰が読んでも引っかかる場所で、そこが減れば、書き手の癖や口調はそのまま残っていて構いません。
冒頭のメールは、直したあとも、言葉はほとんど元のままでした。それでも「商品はいつ届くのでしょうか」という返事は、来なくなるはずです。読みにくさは小さな手間の積み重ねなので、一気に名文を目指す必要はなく、止まる場所を一つ減らすたびに、その分だけ読みやすくなっていきます。
出す前に、さっと校正
「この使い方、合っているかな」と迷ったら、書いた文章をLINTOに貼って校正してみてください。誤字や表記のゆれ、読みにくい言い回しまで、無料でまとめて見直せます。メールを送る前、記事を公開する前、SNSに投稿する前のひと確認に、どうぞお役立てください。
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