並列・対比をそろえる|「AはB、CはD」が途中で崩れない書き方
プランの案内を書く人の頭の中には、たいてい表があります。縦にプラン名、横に料金やキャンセルの条件。その表を見ながら文章にすると、書き手には全部のマスが見えているのに、文には一行につき一つのマスしか載りません。少人数のヨガ教室が出した、こんな案内です。
月4回プランは1回あたりの料金がお得で、都度払いプランは前日までならキャンセル料がかかりません。
「月4回プランは」「都度払いプランは」と並ぶので、読んでいる側は二つを同じものさしで比べるつもりで読み始めます。ところが前半は料金、後半はキャンセルの話で、ものさしが途中で替わっています。頭の中に表を作り直すと、月4回のキャンセル料と都度払いの料金のマスが空いたまま。対比の形で並べられた文を読む人は、空いたマスを埋めようとして前へ戻ります。 書いた人には見えていた表が、読む人には半分しか渡っていないわけです。
比べる軸が違うなら、無理に対比の形に乗せない
直し方は二つあります。一つは、対比をやめてプランごとに言い切ること。
月4回プランは、1回あたりの料金がお得です。都度払いプランは、前日までならキャンセル料がかかりません。
お得という情報も、キャンセル無料という情報も残っています。「で」で一文につないでいたのを切り離し、別々の話として並べただけで、空いたマスを埋めに戻る必要がなくなります。
もう一つは、一段上の軸を立てて、そこでそろえる方法です。料金とキャンセル条件は別のものさしですが、「どんな人に向くか」という軸なら両方が同じ列に乗ります。
毎週通える方には月4回プランが、予定が読みにくい方には都度払いプランが向いています。
こちらは対比の形を保ったまま、左右が「向いている人」で対応しています。どちらを選ぶかは、案内の目的によります。料金表がすぐ下にあるなら前者で足りますし、表がなく、どちらを選べばいいか迷っているお客さんに向けた文なら後者のほうが親切だと思います。並列や対比は、左右を同じものさしで見比べられるときにだけ、一つの形にまとめられます。 軸がそろわないのに形だけそろえると、どこかのマスが空きます。
必ず付くものと、条件つきのものは同じ列に置かない
同じ列に性格の違うものが混じる崩れは、特典の並びでもよく起きます。
定期プランには、毎週のレッスンとマットの無料レンタルに加え、ご友人を紹介いただくと初月の月会費が半額になります。
「毎週のレッスン」「マットの無料レンタル」と読んできた流れで、最後の半額も自動で付く特典に見えます。「紹介いただくと」でようやく条件つきだと分かり、前の二つと同じ列なのかどうかを確かめ直すことになる。急いで読んだ人が「半額になるって書いてあった」と受付で言い出しても、無理はありません。
定期プランには、毎週のレッスンとマットの無料レンタルがついています。ご友人を紹介いただいた場合は、初月の月会費が半額になります。
常に含まれる特典と、紹介という条件つきの割引を、別の文に分けました。半額も紹介の条件も落としていません。誰でも必ず受けられるものと、何かをした人だけが受けられるものは、列の性格が変わるところで文を分けると、何が確実で何が条件つきかが先に伝わります。
少し脇道になりますが、法令の文章では、並べるものの大小を接続詞で区別しています。小さなまとまりを「及び」でつなぎ、それより大きな段階を「並びに」で受ける、という使い分けです。日常の案内文で真似する必要はありませんが、並べるものには段階がある、という意識は同じです。
形と語順を、左右でそろえる
中身のものさしがそろっていても、表面の形がそろっていないと、やはり一度引っかかります。入会特典の文です。
入会時には、入会金が無料になり、初回レッスンの割引、タオルのプレゼントもございます。
「入会金が無料になり」と動詞で始まったのに、次が「初回レッスンの割引」「タオルのプレゼント」と名詞に変わります。文として読んでいたのか品物の名前を読んでいたのか、途中で切り替えが要る。中身を変えず、向きだけそろえます。
入会時には、入会金が無料になり、初回レッスンが割引になり、タオルをプレゼントします。
三つとも動詞で受けました。「割引になり」「プレゼントします」と語尾がやや単調に感じるなら、「入会金は無料、初回レッスンは割引、タオルは進呈」と全部を名詞でそろえる手もあります。どちら向きにそろえるかより、途中で向きが変わらないことが大事です。
語順も同じです。
平日は夜のクラスを多く開いており、朝のクラスを休日は中心にしています。
前半は「平日は、夜のクラスを」の順なのに、後半は「朝のクラスを、休日は」と入れ替わっています。同じ並びで読めると思っていた人は、後半で語順をたどり直します。
平日は夜のクラスを多く開き、休日は朝のクラスを中心にしています。
並べる項目は、品詞と語順を左右でそろえると、同じ列のものとして一息で読めます。 夜と朝、平日と休日という中身はそのままで、いつ何があるのかが見比べやすくなりました。
文頭の助詞だけを拾って読む
対比でいちばん見落としやすいのが、助詞のずれです。
年間プランは更新の手間がなく、月々プランでいつでも解約できます。
「年間プランは」で始まったので、読む側はもう片方も「月々プランは」と続くと身構えます。ところが「月々プランで」と来るため、プランどうしを比べているのか、月々プランでできる操作の話に移ったのか、一拍考えてしまう。
年間プランは、更新の手間がかかりません。月々プランは、いつでも解約できます。
「で」を「は」に直し、二文に分けました。「は」で対比を始めたら、もう片方も「は」で受けると、左右が同じ話題として対応します。 書き終えた案内を見直すとき、各文の文頭の助詞だけを拾って声に出してみると、「は、は」「は、で」のように対応の崩れが耳で分かります。
ただし、そろえようとして刻みすぎると、今度はぶつ切りになります。「平日は夜のクラスです。休日は朝のクラスです」と二文に切るより、軸がそろっているなら「平日は夜、休日は朝のクラスが中心です」と一文にしたほうが読めます。語尾の細かな言い回しや特典を並べる順番を好みで整えても、見比べやすさは変わりません。手を入れるのは、軸がずれている、条件つきが紛れている、形や助詞が対応していない、と確かに言える場所に限ったほうがよさそうです。
案内を書き終えたら、いちど頭の中の表に戻してみると早いです。縦にプラン、横に項目を書いて、文に出てきた中身をマスに入れていく。埋まらないマスがあれば、その対比はそろっていません。埋めるか、列を分けるか、一段上の軸に替えるか。表が埋まる形になっていれば、読む人の頭の中でも表は埋まります。
出す前に、さっと校正
「この使い方、合っているかな」と迷ったら、書いた文章をLINTOに貼って校正してみてください。誤字や表記のゆれ、読みにくい言い回しまで、無料でまとめて見直せます。メールを送る前、記事を公開する前、SNSに投稿する前のひと確認に、どうぞお役立てください。
この連載の記事
- 前の回:述語を使い回さない
- 次の回:受け身と能動を混ぜない
- 文章力編の入口:わかりにくい文章の特徴と直し方
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