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係り受けのねじれとは?修飾語の置き方で誤読を防ぐ

「係り受け」は学校の国語で出てくる文法の言葉で、ある言葉がほかの言葉に係り、係られた側がそれを受ける、という関係を指します。「早めに進める」なら「早めに」が係る側、「進める」が受ける側です。授業で線を引いて矢印でつないだ、あの作業です。日常の文章でこの矢印が問題になるのは、矢印の先が一つに決まらないときで、たとえば役所の手続きの案内に、こんな一文が混ざることがあります。

早めにご連絡いただいた方の手続きを進めます。

早めに連絡した人の手続きを進める、とも読めますし、連絡した人の手続きを早めに進める、とも読めます。「早めに」の矢印が「ご連絡いただいた」にも「進めます」にも届いてしまい、文だけでは決められません。修飾語がどの言葉にかかるのか決まらず、読み方が二つ残る状態を、この連載では係り受けのねじれと呼びます。 誤字と違って見た目では分からず、読んだ人は文脈に合いそうなほうを自分で選びます。

かけたい言葉の、すぐ隣に

係り受けがねじれる一番の原因は、修飾語と受ける言葉が離れていることです。間に別の言葉が入るほど、矢印の候補が増えます。直し方の基本は、修飾語をかけたい言葉のすぐ近くに置くことです。 さきほどの文で、早く進めるのがこちらの手続きなら、こう動かします。

ご連絡いただいた方の手続きを、早めに進めます。

「早めに」が「進めます」の隣に来たので、こちらが急ぐ意味にしか読めません。逆に、早めに連絡した人を対象にしたいなら、「早めにご連絡いただいた方は、手続きを先に進めます」と受ける側を変えたほうがよさそうです。

動かす前に、どちらにかけたいのかを書いた本人が決めておく必要があります。「早めに、というのは誰のことですか」と聞かれて答えに迷うなら、文の問題というより、まだ決めていなかったのかもしれません。

長い説明は先に、短い説明は後に

名詞の前に説明を二つ以上並べるときは、順番にも決まりごとがあります。文章の書き方の本でよく引かれる原則で、本多勝一の『日本語の作文技術』で知られていますが、長い修飾語を先に、短い修飾語を後に置く、というものです。

新しい来庁の前に持ち物と受付時間をご確認いただける案内ページを公開しました。

「新しい」が「来庁」にかかるように見えて、「新しい来庁?」と一瞬止まります。短い「新しい」を、長い説明のあとへ回します。

来庁の前に持ち物と受付時間をご確認いただける新しい案内ページを公開しました。

短い修飾語は受ける名詞の直前に置けば、ほかの言葉に奪われにくくなりますし、長い修飾語は長いというだけで「しばらく説明が続く」と分かるので、先に置いても迷われにくい。ただ、この文は順番を直しても、「案内ページを公開しました」に着くまでがまだ長いです。

説明が長すぎるなら、文の外へ

日本語は名詞の前に説明をいくらでも重ねられる言葉で、一つの名詞に説明を盛りすぎると、中心の言葉にたどり着くまで、その説明を抱え続けなければなりません。順番を整えてもまだ重いときは、近づけるより説明を文の外へ出すほうが確実です。中心を短く言い切り、抱えていた説明を後ろから足します。

新しい案内ページを公開しました。来庁の前に、持ち物と受付時間をご確認いただけます。

何を公開したのかが先に伝わり、そのページで何ができるのかは別に受け取れます。案内やお知らせでは、この形の出番が多いと思います。

読点で足りるか、語順から直すか

修飾のまとまりは、読点で境目を見せるだけで軽くなることもあり、そのときは語順を動かすまでもありません。

ただし、読点は境目を見せる目印であって、かかり先を作り直す道具ではありません。読み方が二つ残る文は、読点を足しても候補が消えません。

初めて来庁される方に窓口でご記入いただく書類をまとめました。

「初めて来庁される方に」が、案内の宛先なのか、書類を記入する人なのかで揺れます。「に」の一字が、どちらの読みにも付いてしまうからです。こういう文は読点ではなく、語順を変えるか、分けます。

窓口でご記入いただく書類を、初めて来庁される方向けにまとめました。

目安は、読み方の候補が二つ以上残るかどうか。 境目を一つ見せるだけなら読点、意味が分かれるなら語順か分割です。読点そのものの打ち方は、読点の打ち方で意味を切るで別に扱います。

直す場所の選び方

係り受けの曖昧さは、全部が同じ重さではありません。読み方が変われば相手の行動まで変わる文から見ます。役所の案内で優先して見たいのは、対象者、料金、期限、条件、例外のあたりで、「早めにご連絡いただいた方」のような対象者の限定は、読み違えた人がそのまま窓口に来てしまうので、念入りに見ておきたい場所です。

はっきりさせようとして全部を別の文にすると、今度は細切れになります。「二階に新しい窓口を設けました。住所変更の手続きは、この窓口で受け付けます」と刻むより、「二階の新しい窓口で、住所変更の手続きを受け付けます」のほうが読みやすく、かかり先が一つに決まっているなら、一文のままでかまいません。

送る前の見直しは、修飾語を一つずつ指で押さえて、「これはどの言葉にかけたいか」と自分に聞く作業になります。決めたら近づける。長ければ外へ出す。読点で足りなければ分ける。授業で引いたあの矢印を自分の文に一度引いてみると、ねじれは案外あっさり見つかります。

出す前に、さっと校正

「この使い方、合っているかな」と迷ったら、書いた文章をLINTOに貼って校正してみてください。誤字や表記のゆれ、読みにくい言い回しまで、無料でまとめて見直せます。メールを送る前、記事を公開する前、SNSに投稿する前のひと確認に、どうぞお役立てください。

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