正しい敬語 / 第91回
「ごめんください」は謝罪?訪問先で人を呼ぶときの挨拶
「ごめんください」は、訪問先で人を呼び、応対を求めるときの挨拶です。玄関で「ごめんください」と声を掛けても、何か悪いことをしたと謝っているわけではありません。
もともと許しを求める意味を持つ言葉ですが、今の訪問の場では「どなたかいらっしゃいますか」「入ってもよいですか」に近い役割を果たします。返事を待たずに入り込んでよいという意味にはなりません。
玄関では挨拶に続けて名乗る
ごめんください。14時にお約束している、青葉会の佐藤です。
訪問の挨拶、名前、約束の内容がそろう例です。「ごめんください」を何度も繰り返すより、応対する側が誰の訪問か分かりやすくなります。
インターホンなら「こんにちは。佐藤です。山田様と14時のお約束で伺いました」でも自然です。機器越しだから特別な敬語が必要になるのではなく、声だけでも人物と用件が伝わるようにします。
約束がない訪問なら、「近くまで参りましたので、ご挨拶に伺いました。今、お時間はよろしいでしょうか」と都合を尋ねられます。挨拶したことを、そのまま面会の承諾と受け取らないようにします。
店で人を呼ぶ場合も使える
小さな店に入り、店員が見当たらない場合、「ごめんください」と声を掛けられます。ただ、今の店では「すみません。どなたかいらっしゃいますか」も使いやすい言い方です。
すみません。予約した品の受取りで伺いました。
相手が出てきたら、このように用件へ進めます。「ごめんください」は、必ず住宅の玄関でしか使えないわけではありませんが、店の雰囲気や普段の言い方に合わせて構いません。
人の姿が見えないからといって、奥の作業場や事務室まで進むのは別の問題です。受付の呼出し方法が書いてあるなら、その案内に従います。「ごめんください」は応対を求める挨拶で、入室の許可そのものではありません。
中へ招かれた後は「お邪魔します」
「どうぞお入りください」と言われたら、「お邪魔します」「失礼します」と応じて入れます。
ありがとうございます。お邪魔します。今日はお時間をいただき、ありがとうございます。
家に上がる場面なら自然な挨拶です。事務所の会議室へ案内された場合は、「失礼いたします」と入ることもできます。
玄関での呼びかけと、実際に中へ入る挨拶は役割が違います。そのため、両方を使っても不自然ではありません。ただ、短い間に「ごめんください」「申し訳ありません」「恐れ入ります」を重ねて謝り続ける必要はありません。約束どおりの訪問なら、まず来たことを伝えれば十分です。
相手が忙しそうなら、「今日は品物をお渡しするだけですので、こちらで失礼します」と滞在せずに用件を済ませる言い方もあります。
帰り際の「ごめんください」は古い間違い?
「ごめんください」は、別れ際にも使われる言葉です。訪問時にしか使えないと決める必要はありません。「それでは、ごめんくださいませ」と帰る挨拶を耳にすることもあります。
ただ、普段使わない表現を無理に選ぶより、「本日はありがとうございました。失礼いたします」と伝えれば自然です。電話を終えるときも、「それでは、失礼いたします」で丁寧に閉じられます。
相手が「ごめんください」と帰ろうとしたときは、謝罪として「大丈夫です」と答える必要はありません。「ありがとうございました。どうぞお気をつけて」と見送れます。訪問の始まりなのか終わりなのかを踏まえると、同じ言葉でも返し方を選びやすくなります。