正しい敬語 / 第90回
「身に余るお言葉です」は大げさ?褒められたときの受け止め方
「身に余るお言葉です」は、自分には過分だと感じる褒め言葉を、ありがたく受け止める返事です。表彰や推薦など改まった場面に合いますが、日常の小さなお礼に使うと大げさに聞こえることもあります。
褒められた内容を否定する言葉ではありません。「ありがとうございます」と受け止めた上で、評価への感謝を控えめに表せます。
大きな評価を受けたときに使う
身に余るお言葉をいただき、ありがとうございます。今回の発表をそのように評価していただけたことを、大変うれしく思います。
発表に高い評価を受けた場面の例です。「とんでもありません。全く大したものではありません」と強く否定するより、相手の評価を受け止めています。
「身に余る」は、その評価や待遇が自分の立場や力以上だという気持ちを表します。だからといって、本当に能力がないと告白しているわけではありません。受賞の挨拶などで、栄誉をありがたく感じる言葉として使えます。
「身に余る光栄です」は、賞や役目を受けたことへの表現です。「身に余るお言葉です」は、褒めてくれた言葉に向けています。何を受け取ったかに合わせると、定型句の使い方がはっきりします。
普段の褒め言葉には短いお礼でもよい
同僚から「資料、分かりやすかったです」と言われるたびに「身に余るお言葉です」と返すと、会話の調子が急に硬くなることがあります。
ありがとうございます。図を入れたので、伝わってよかったです。
そう言っていただけてうれしいです。次回も分かりやすく準備します。
普段のやり取りなら、この程度の返事で感謝が伝わります。目上に褒められたからといって、必ず最も改まった表現を使う必要はありません。
また、「お褒めにあずかり光栄です」も使えますが、場面によっては式典のような響きになります。評価の大きさと会話の改まり方に合う返事を選びます。
共同の成果なら仲間の働きも伝える
自分だけの成果ではない場合は、感謝を受け止めてから、誰の協力があったかを添えられます。
ありがとうございます。会場の皆様が準備を支えてくださったおかげです。いただいたお言葉は、担当者にも伝えます。
こうすれば、相手の褒め言葉を打ち消さずに、仲間の働きも示せます。「私は何もしていません」と言い切ると、相手が何を評価したのかまで否定するように聞こえる場合があります。
実際に自分が担当した部分があるなら、「構成を担当しましたが、写真と図版は山田が整えてくれました」と説明できます。謙遜のために事実を小さくするより、役割を正確に伝える方法です。
他の人へ伝える約束をしたら、言葉を大きく盛らず、評価された内容をそのまま共有します。「身に余るお言葉」を、具体的な褒め方をぼかす表現にしないようにします。
期待まで引き受けるかは別に答える
「次回も全部お願いしたい」と褒め言葉に依頼が続く場合、お礼を言ったことが、依頼を全面的に承諾したことになるとは限りません。受けられる範囲を別に答えます。
ありがたいお言葉をいただき、ありがとうございます。次回については日程を確認し、来週火曜までにお返事します。
引き受けられるなら、「ぜひ担当させてください」と意思を示せます。難しいなら、「今回は日程が重なるため、担当は難しい状況です」と伝えます。
「身に余るお言葉です」だけで返事を終えると、相手は次の依頼も了承されたのか迷うことがあります。感謝と承諾を分けて伝えれば、褒めてくれた気持ちを受け取りながら、無理な約束も避けられます。