正しい敬語 / 第71回
「お越しください」は来てほしいときに使える?招待と呼び出しの伝え方
「お越しください」は、相手に来てもらうときの丁寧な言い方です。展示会への招待にも、予約した窓口への案内にも使えます。目上の人に使うだけで失礼になる表現ではありません。
ただ、来ることが決まっている人への案内と、これから予定を空けてもらうお願いでは、添える言葉が違います。招く気持ちと、来てもらう必要がある事情を分けて伝えると、相手も予定を判断しやすくなります。
展示会や催しへの招待に使う
今週末、工房で作品展を開きます。お近くにいらっしゃる際は、どうぞお越しください。
これは参加するかどうかを相手が決められる招待です。「どうぞ」は歓迎する気持ちを添え、「お近くにいらっしゃる際は」で負担の少ない機会に来てほしいと伝えています。
参加を把握したい会なら、招待だけで終えず、返答も頼みます。「ご都合がよろしければ、懇親会にお越しいただけますか。参加人数を確定するため、12日までにお返事をお願いいたします」と書けば、出席を歓迎していることと、返事の期限が両方伝わります。
「お越しくださいませ」は、接客などで使われる改まった形です。通常の招待状やメールなら「お越しください」で十分に丁寧です。「ませ」を足さないと命令になるわけではありません。
日時が決まっている人には場所も示す
ご予約の15分前までに、1階受付へお越しください。受付でお名前をお知らせいただければ、担当者がご案内します。
来ることに合意している相手には、こうした直接的な案内が役立ちます。到着してほしい時刻、入口、受付での手続きが分かれば、読み手が別のページを探す必要もありません。
「お時間がありましたらお越しください」とすると、予約に間に合わなくてもよいように読める場合があります。必要な到着時刻を、遠慮の言葉で曖昧にしないようにします。
会場が複数あるときは「こちらへ」だけで済ませず、「東館2階の受付へ」と書けます。丁寧な語を増やすよりも、行き先を正しく案内することが助けになる場面です。
都合を聞かずに呼び出す形になっていないか
まだ面会を約束していない相手に「明日10時にお越しください」と送ると、こちらだけで予定を決めた印象になります。問題は「お越し」の敬語ではなく、日時への合意がないことです。
実物をご覧いただきながらご相談したく、来週お越しいただける日時はございますか。難しい場合は、写真をお送りしてご説明することもできます。
来訪が必要な理由と、相手が選べる範囲を示した例です。対面が本当に必要なら、実施できない別の方法を気軽に約束する必要はありません。「火曜か木曜の午後で、ご都合のよい時間をお知らせください」と具体的に相談できます。
自分が訪ねる余地があるなら、「こちらから伺うことも可能です」と添えられます。相手の移動だけを前提にしない文になります。
迎えた後は来てくれたことにお礼を
来訪後には「お越しくださいまして、ありがとうございます」「本日はお越しいただき、ありがとうございます」と言えます。前者は相手が来てくれたこと、後者は自分が来てもらったことに焦点を置いた表現です。
親しい相手なら「来てくださって、ありがとうございます」でも自然です。招待する文を改まった形にしたからといって、当日の会話まで全て同じ硬さにそろえる必要はありません。
帰り際には「本日はお越しいただき、ありがとうございました。ご覧になった作品についてご質問がありましたら、お知らせください」と続けられます。来訪のお礼に、実際に話した用件を一言つなぐと、その人に宛てた挨拶になります。