正しい敬語 / 第43回
「ご容赦ください」は謝罪になる?「申し訳ありません」との役割の違い
ミスの連絡に「ご容赦ください」と書くと、おわびをしたことになるのでしょうか。許しを求める気持ちは伝わりますが、その一言で謝罪や説明を済ませられるとは限りません。
「容赦」は、許すこと、大目に見ること。「ご容赦ください」は、相手に許してもらいたいときの表現です。
「申し訳ありません」はおわび、「ご容赦ください」は許しのお願い
「提出が遅れました。ご容赦ください」では、何が起きたかと、許してほしいことだけが並んでいます。相手が必要とするのは、いつ届くのかという情報かもしれません。
「提出が遅れ、申し訳ありません。修正に時間がかかっており、本日17時までにお送りします。」
このように、おわびと今後の対応を伝える方が、相手は状況を判断できます。許しを求める言葉と、落ち度を認めて謝る言葉は役割が違うのです。
目上の人には使えない、という単純な線引きではありません。誰が困っていて、こちらが何をお願いしているのかが問題になります。
行き違いへの一言として使う
催促を送る際には、すでに対応してくれている可能性があります。そんな場合は「本メールと行き違いでご連絡をいただいておりましたら、何とぞご容赦ください」と添えられます。
まだ起きているか分からない行き違いについて、失礼があれば許してほしいと伝える使い方です。自分の明確なミスを説明せずに済ませる場合とは異なります。
似た「ご了承ください」は、事情を理解して受け入れてほしいと伝える表現です。「ご容赦ください」と同じ気持ちで置き換えると、迷惑をかけた相手に「受け入れてください」と迫る文になることもあります。
受付条件を事前に案内するのか、すでに生じた不都合を謝るのか。まずそれを決めると、定型句を最後に足すだけの文章から抜け出せます。
事前のお断りでは、起こり得ることを示す
当日は会場の準備により、受付開始が数分遅れる場合があります。お待たせすることがございましたら、ご容赦いただけますと幸いです。
起こるかもしれない不都合について、あらかじめ理解と許しを求める例です。ただし、この一文を書けば、長時間待たせても説明しなくてよくなるわけではありません。実際に遅れが生じたら、その時点の状況と見込みを伝えます。
受付を休止するなど、既に決まったことなら、「午後1時から2時までは受付を休止します」と事実を先に示します。曖昧な「ご不便はご容赦ください」だけでは、利用する人が予定を立てられません。
日程や条件に納得してもらう必要がある場面で、許しを求める定型句を同意の代わりに使わないことも大切です。
謝られた側の返事に使う言葉ではない
お気になさらないでください。予定には間に合いましたので、大丈夫です。
相手が謝ってきたときは、このように、こちらがどう受け止めたかを返せます。「ご容赦ください」は自分が許してもらう側の言葉なので、相手を許す意味で返すと向きが逆になります。
まだ困っていることがあれば、「ご連絡ありがとうございます。事情は承知しました。修正版をお送りいただける時刻を教えてください」と、必要な対応を尋ねられます。無理に「大丈夫です」と言い切る必要もありません。
「容赦」には手加減する意味もあり、「容赦なく指摘してください」と使うことがあります。ただ、感想を求める通常の依頼なら、「気になる点があれば、率直に教えてください」と言うほうが、相手も必要以上に厳しい言葉を探さずに済みます。