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LINTO日本語の校正と推敲

読めそうで読めない漢字 / 第74回

「翻弄」は「ほんろう」。忙しいだけで「翻弄された」と言える?

「翻弄」は「ほんろう」と読みます。相手を思いどおりにもてあそび、振り回すことです。「予定の変更に翻弄された」なら、自分では制御しにくい変更が続き、それに合わせて動かされていた様子を表します。単に忙しかったという意味とは少し違います。

「翻」と「弄」が表す動き

「翻」には、ひるがえる、ひるがえす意味があります。「弄」はもてあそぶことです。「翻弄」は、相手を意のままに動かすように、もてあそぶ意味につながります。「翻訳」の「翻」を使いますが、言葉を訳すことと直接同じ動作を述べているわけではありません。

「翻弄する」は動かす側、「翻弄される」は動かされる側の言い方です。「相手の巧みな動きが守備陣を翻弄した」と「守備陣は相手の動きに翻弄された」は、同じ場面を別の側から説明できます。

「ほんろう」の最後は「ろう」と伸ばします。「弄」を見て「どう」や「のう」と読まず、「愚弄」の「ろう」と同じ読みで覚えられます。ただし、愚弄はばかにしてからかうことで、翻弄と同じ意味ではありません。

「忙しい」と「翻弄される」は別

「翻弄される」は、他者や状況に振り回され、自分の思うように動けない様子を表します。 予定した用事を順にこなして忙しいだけなら、「用事が立て込んでいた」で十分です。

「集合場所が何度も変わり、その連絡に翻弄された」なら、変更に合わせて動かされていたことが伝わります。「晴れたと思うと雨が降り、撮影班は天候に翻弄された」という例では、天候に意思があるわけではなく、自分では変えられない状況を人の行為になぞらえています。

「多くの来客に翻弄された」と書くと、来客に振り回されたという否定的な受け止め方が含まれます。単に盛況だったことを伝えたいなら、「多くの来客への対応で忙しかった」としたほうが、客を困った存在のように扱わずに済みます。

スポーツや物語では巧みさを表すことも

「速さの違う球を投げ分け、打者を翻弄した」は、相手に対応させない巧みさを描く表現です。「俳優の演じる人物に、周囲の登場人物が翻弄される」という紹介なら、その人物の言動が話を動かしていることが分かります。

「読者を翻弄する構成」といえば、予想を何度も裏切る仕掛けや、情報の出し方を評価している場合があります。困らせるという悪い意味だけでなく、作品の面白さを表す文にも使えます。

ただし、「読者を翻弄する」から、分かりにくい文章なら何でも魅力的だとはなりません。必要な情報が欠けて理解できないだけなら、「説明が分かりにくい」と評価されることもあります。誰をどのように振り回し、それがどんな効果を生むかによって、受け取られ方は変わります。

「何に翻弄されたか」を具体的にする

「状況に翻弄された一年だった」という表現は、まとめの感想として使えます。ただ、その一文だけでは具体的な経験が見えません。「会場の変更や交通の乱れが相次ぎ、予定を立て直すことが続いた」と添えると、何に振り回されたかが伝わります。

また、「相手に翻弄された」と書くと、相手がわざともてあそんだように感じられる場合があります。「相手の返事が変わるたび、こちらも予定を変えた」と事実を先に示せば、意図を決めつけずに困った状況を説明できます。

「運命に翻弄される」という言い方は、自分の力ではどうにもならない出来事に人生が動かされることを表します。強い比喩なので、小さな予定変更に使うと大げさになります。出来事の規模と、自分で動かせなかった程度に合わせて選ぶと、翻弄という語が必要な場面が見えてきます。

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