正しい敬語 / 第130回
「もう一度お願いします」は失礼?聞き取れなかったときの敬語
「もう一度お願いします」は、聞き取れなかったときに使える丁寧な頼み方です。目上の相手に使えない言葉ではありません。ただ、どこから聞き直したいかを添えると、相手は話の全部を繰り返さずに済みます。
声が聞こえなかったのか、言葉の意味が分からなかったのかでも、頼み方は変わります。必要なところを具体的に尋ねると、短い返事でも配慮が伝わります。
音が聞き取れなかったとき
恐れ入ります。最後の部分が聞き取れなかったため、もう一度お願いできますか。
何を言ったか聞こえなかった場面の例です。「はい?」だけでも口調によっては自然ですが、電話など表情が見えない場では、不満や聞き返しの強さとして伝わることがあります。
聞こえなかった箇所が分かるなら、「日付のところを、もう一度伺えますか」と絞れます。前半は聞けていることが分かるため、相手も必要な部分だけ繰り返せます。
相手の声を直接「小さいです」と評価するより、「少しお声が遠いようです。もう少し大きめにお話しいただけますか」と、聞こえている状態とお願いを伝える方法もあります。通信が途切れているなら、その事情も添えます。
名前や数字を確かめるとき
ご予約日は、10月15日でよろしいでしょうか。
一応聞き取れたものの、自信がない場合は、自分が聞いた内容を復唱して確認できます。「もう一度」だけより、相手は合っているか違うかを答えやすくなります。
お名前の最後の一文字を、もう一度教えていただけますか。漢字も併せて伺えると助かります。
名前の場合は、どの部分を確認するかを伝えます。聞き取れていないのに分かったふりで違う名前を呼び続けるより、その場で尋ねるほうが確実です。
長い番号では、「最初の4桁は確認できました。続きからお願いできますか」と区切って尋ねられます。相手の説明の仕方を責めずに、こちらが記録できた範囲を示せます。読み上げてもらった後も、重要な箇所は復唱して確認すると行き違いを減らせます。
聞こえたけれど、意味が分からなかったとき
「受付済み」というのは、申し込みが完了したという意味でしょうか。それとも、この後に必要な手続きがありますか。
言葉の意味を確認したい場面です。声は聞こえているので、同じ文をもう一度言ってもらっても疑問が解消しないことがあります。この例では、自分の理解と、迷っている別の可能性を示しています。
聞こえなかったときは繰り返しを、意味が分からないときは説明をお願いします。 「もう一度ご説明ください」と広く頼む前に、分からない点を一つ挙げられると、話が進みやすくなります。
専門的な言葉なら、「その言葉になじみがないため、どのような状態を指すか教えていただけますか」と尋ねられます。知らないことを大げさに謝る必要はなく、必要な説明を丁寧に求めて構いません。
何度も聞き直すときは方法を変える
何度も申し訳ありません。接続が不安定で聞き取りにくいため、集合場所を文字でもお送りいただけますか。
同じ方法では聞こえないときは、文字で受け取るなど別の方法を頼めます。ただし、相手がすぐに送れるとは限らないので、「可能でしたら」と条件を添えてもよいでしょう。
以前に教わったことを忘れた場合は、「前に伺った内容を失念してしまい、申し訳ありません。提出先を改めて教えていただけますか」と、自分の側の事情を伝えられます。相手が初めて説明するかのように装う必要はありません。
聞き直した後は、「ありがとうございます。北口に午前10時ですね」と確認できたことを返せます。「分かりました」とだけ言うより、相手も正しく伝わったかを確かめられます。聞き返す言葉を過度に長くするより、聞き取れたところまで返すほうが、やり取りは落ち着いて進みます。