正しい敬語 / 第26回
「今回は見送らせていただきます」で何を断るか伝わる?
「今回は見送らせていただきます」は、提案や依頼を断るときに使われます。ただ、この一文だけでは「条件を変えれば検討してもらえるのか」「今月だけ難しいのか」は分かりません。断りとして伝わっても、次にどうしてよいかが相手に残る返事です。
「今回」は何を指すのかを具体的にする
見積もりへの返事で「今回は見送ります」と書く場合、金額が合わないのか、購入そのものが不要になったのかによって、その後のやり取りが変わります。
予算に収まる提案なら引き続き検討したい場合は、「今回のお見積もりでは予算を超えるため、発注は見送ります。仕様を絞った場合の金額をご提示いただけますか」と書けます。
購入の計画自体がなくなったなら、「購入計画が中止となったため、今回の発注は見送ることになりました」と伝えるほうが事情に合います。必要があれば「再見積もりのご用意は不要です」と添えられます。
見送りの対象と、再提案を求めるかどうかを分けて書くと、相手を待たせずに済みます。
「見送らせていただきます」は必須ではない
「させていただく」は、相手や第三者の許可を受け、そのことで自分側が恩恵を受ける場合が基本です。文化庁の「敬語おもしろ相談室」第三話では、許可や恩恵を受けたと見立てる使い方も含め、場面で受け止め方が変わると説明されています。
相手に配慮して「見送らせていただきます」と書くことを、一律に誤りと決める必要はありません。ただ、自分側で決めた結果を知らせるなら、「見送ることにいたしました」でも伝えられます。
たとえば「ご提案いただき、ありがとうございました。社内で検討した結果、今回は導入を見送ることにいたしました」。この形なら、丁寧さを保ちながら判断が済んでいることを示せます。
返事を先延ばしにするときは見送りと区別する
まだ結論が出ていないのに、控えめな返事のつもりで「今回は見送ります」と書くと、断ったものと受け取られます。判断の延期なら、「検討にもう少し時間をいただきたく、回答を来週火曜までお待ちいただけますか」と、その依頼を伝えます。
断るときの「また機会がありましたら」も、次の依頼を約束する言葉ではありません。具体的な再検討の予定があるなら時期を示し、予定がないなら、お礼と今回の結論だけで締めても失礼にはなりません。