間違えやすい日本語 / 第54回
「敵に煮え湯を飲まされた」は合ってる?相手との関係で変わる慣用句
「長年の敵に煮え湯を飲まされた」。ひどい目に遭った感じは伝わりますが、慣用句の基本の意味から考えると、相手との関係が気になります。「煮え湯を飲まされる」は、信用していた相手に裏切られ、ひどい目に遭うことを表す言い方です。
ひどい仕打ちに「裏切り」が加わる
任せていた相手が約束を破り、こちらだけが責任を負うことになった。煮え湯を飲まされた思いだった。
信頼があったからこそ、被害に驚き、裏切られたと感じています。「煮え湯を飲まされる」は、損失の大きさだけでなく、その関係まで含む表現です。
相手を最初から警戒し、争っていたなら「敵に痛い目に遭わされた」「相手に一杯食わされた」など、伝えたい内容に合う別の言い方があります。だまされたのでなければ、「一杯食わされた」も無条件には使えません。
元は敵だった人にも使える?
元は敵対していても、和解して信用していたところを裏切られたなら、「煮え湯を飲まされた」という説明は成り立ちます。肩書としての敵・味方だけではなく、出来事の直前に信頼関係があったかが大切です。
JapanKnowledgeの解説は、敵にひどい目に遭わされる意味の使用例にも触れています。この広い使い方が存在しないわけではありません。ただ、相手との関係を正確に書くなら、信頼を裏切られたのか、敵に敗れたのかを区別できます。
ニュースや説明文で単に「煮え湯を飲まされた」と書くと、読者は裏切りの経緯を想像するかもしれません。実際には競争で敗れただけなら「競合に先を越された」で足ります。強い慣用句を選ぶ前に、出来事のどこがつらかったのかを言葉にすると、余計な関係まで付け加えずに済みます。
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