正しい敬語 / 第44回
「お取り計らいください」で何を頼んだつもり?曖昧にならない依頼文
「よろしくお取り計らいください」。丁寧に依頼したつもりでも、受け取った側には「何をすればよいのだろう」と残ることがあります。
「取り計らう」は、事情に応じて物事をうまく処理すること。方法を相手に委ねる言葉なので、望む結果まで省くと頼み事の中身が消えてしまいます。
「お取り計らいください」の前に、何をしてほしいかを書く
たとえば「見学の件、お取り計らいください」だけでは、日程調整、担当者の紹介、入館手続きのどれを頼んでいるのか分かりません。
「来月の見学について、担当の方をご紹介いただけますでしょうか。」
紹介だけをお願いしたいなら、これで十分です。一方、手配の進め方を相手に任せたいときは、「来月中に3名で見学できるよう、お取り計らいいただけますと幸いです」と書けます。人数や時期が分かれば、相手も調整を始められます。
方法は委ねても、依頼の目的と必要な条件は書く。これが「お取り計らい」を曖昧にしないこつです。
お礼では、してもらったことを具体的に
「お取り計らい」は、配慮を受けたあとの感謝にも使えます。
「急な日程変更にもかかわらず、会場をご手配くださり、ありがとうございました。細やかなお取り計らいに感謝申し上げます。」
何をしてもらったかが先に分かるので、後半の一言も空疎になりません。普段の連絡なら「日程をご調整いただき、ありがとうございました」と、具体的なお礼だけでも十分丁寧です。
自分の対応を伝える際に「私がお取り計らいします」とすると、文脈によっては自分の配慮を高く述べるように聞こえます。「こちらで手配いたします」「担当者に確認いたします」の方が、行うことも明確です。
丁寧な言葉を足す前に、頼む内容を一文で言えるか。そこを確かめると、この定型句が役立つ場面も見えてきます。
どこまで任せるかを添えた依頼の例
見学は平日の午後、1時間ほどを希望しています。日程と見学順については、皆様のご都合に合わせてお取り計らいいただけますでしょうか。
希望する条件と、相手に任せる部分を分けた例です。「よしなに」「適宜」といった言葉を重ねるより、動かせる条件が分かるほうが、相手は判断しやすくなります。
予算や人数が決まっているなら、それも書いておきます。「すべてお任せします」と依頼した後で細かな条件を次々と付けると、手配のやり直しになることがあります。まだ確定していない点は、「人数は来週までにお知らせします」と保留の範囲を示せます。
相手に手配する権限があるか分からない場合は、「ご担当の方をご案内いただけますか」と窓口を尋ねるところから始められます。
依頼を受けた側は、行うことを具体的に返す
承知しました。候補日を三つ確認し、金曜日までにご連絡します。
頼まれた内容を実行できる場合の返事です。「取り計らいます」だけでも受けたことは伝わりますが、次に何をするかを添えると相手が連絡を待ちやすくなります。
依頼の範囲が分からない場合は、「見学先との日程調整まで、こちらで進めるという理解でよろしいでしょうか」と確認できます。丁寧な定型句で頼まれたからといって、曖昧な部分をすべて推測する必要はありません。
お礼を受け取ったときにも、自分で「行き届いた取り計らいができました」と評価するより、「無事にご見学いただけて、何よりです」と相手の用件がかなったことを喜べます。相手を敬う語と、自分の行動の説明を分けると、自然な返答になります。