間違えやすい日本語 / 第75回
「資料を作製しました」は間違い?「作成」との境目
「会議資料を作製しました」。内容をまとめて配布用の資料を用意した、という報告なら「作成しました」が一般的です。
ただし、「資料」という言葉だけを見て「作製は絶対に間違い」とするのは早計です。文章をまとめたのか、観察に使う物を作ったのかでも変わります。
書類や文章をまとめるなら「作成」
「作成」は、書類や文章、計画などを作り上げるときに使います。議事録、申込書、説明資料、一覧表なら、まずこちらを選べばよいでしょう。
「作製」は、物を作ることに重きを置く言葉です。模型や標本など、形のあるものを実際に作る場面によく合います。
| 作ったもの・作業 | 選びやすい表記 |
|---|---|
| 調査結果をまとめた報告書 | 報告書を作成する |
| 展示するための縮小模型 | 模型を作製する |
| 顕微鏡で見るための標本 | 標本を作製する |
書いた内容を整える「作成」と、物として作り上げる「作製」をひとまずの目安にできます。
紙なら「作製」、データなら「作成」とは限らない
紙の申込書を手書きしても「作成」です。完成品が手に取れるかどうかだけで分けるわけではありません。
一方、図面や地図は、辞書の用例でも「作製」が使われる対象です。現在の文書では「図面を作成する」という言い方も見られ、作業の捉え方や分野の慣行が重なるところがあります。どちらかを機械的に消すより、その文章で何を作っているのかを確かめたい部分です。
冒頭の会議資料なら「調査結果をまとめた資料を作成しました」とすると明確です。展示用の実物資料なら「展示用の模型を作製しました」と対象を具体的に書けます。
「さくせい」の変換に迷ったことが、曖昧な「資料」という名詞を見直すきっかけになる場合もあります。
「作成した資料」の中身を一段具体的にする
「資料を作成しました」と報告されても、読む人は、何ができたのかをまだ知りません。配布する説明書なのか、展示に使う模型なのか、実験で観察する標本なのかで、作業の内容が違います。
「来場者に配る案内文を作成しました」「会場の配置を示す模型を作製しました」と書けば、表記の違いだけでなく、完成したものも伝わります。「資料」という便利な名詞を、具体的な名前に替えてみる方法です。
図や表が入っている書類でも、書類としてまとめる作業なら「作成」が使えます。絵があるから必ず「作製」、文字があるから必ず「作成」と区分する必要はありません。何を作る作業として説明しているかが、読み取る手がかりになります。
「作成済み」と「配布済み」は別の状態
「案内文は作成済みです」とあれば、文書を作り終えたと読めます。しかし、内容の確認が済んだのか、印刷したのか、参加者に配ったのかまでは分かりません。
「案内文を作成し、内容を確認しています」「確認を終えた案内文を印刷しました」「参加者全員へ配布しました」と、進んだ段階に応じて書き分けられます。模型についても、「作製中」と「完成して展示済み」では状態が違います。
- 「申込書を作成した」:書類を作り上げた。
- 「申込書に記入した」:用意された欄に内容を書いた。
- 「申込書を提出した」:提出先へ届けた。
三つを同じこととして扱うと、相手が次の作業を誤解することがあります。「作成」という字を正しく選んだあとも、その言葉で伝えられた範囲を見直すと、報告が一段分かりやすくなります。