正しい敬語 / 第62回
「参考にさせていただきます」は断り文句?採用する気持ちを伝えるには
提案に「参考にさせていただきます」と返事が来た。これは断られたのでしょうか。その一言だけでは判断できません。
「参考にする」は、考えたり決めたりする際の手掛かりにすること。提案をそのまま採用する約束ではありませんが、必ず不採用という意味でもありません。
「参考にする」と「採用する」は約束の範囲が違う
「ありがとうございます。参考にさせていただきます」だけでは、どの部分をどう使うかは伝わりません。積極的に取り入れるつもりなら、そこまで書くと誤解されにくくなります。
「ありがとうございます。冒頭に結論を置くというご提案を取り入れ、構成を直してみます。」
まだ検討中なら、「二つの案を比較する際の参考にいたします。来週中に方針を決める予定です」と返せます。参考にすることと、判断の見通しを分けて示した形です。
採用する気持ちがあるなら、取り入れる点を一つ書く。それだけで、形式的な返事に見えにくくなります。
「させていただく」を使えば丁寧になる?
助言や資料を役立てることで恩恵を受ける場面では、「参考にさせていただきます」が自然に使われることがあります。一方、何にでもこの形を付ける必要はなく、「参考にいたします」でも丁重です。
文化庁の解説は、「させていただく」を、許可を受けることと恩恵を受けることを基本に整理しています。長い形を選ぶだけで、返答の中身が丁寧になるわけではありません。
すでに採用できないと決まっているなら、「今回は日程の都合で採用が難しい状況です。ご提案いただき、ありがとうございました」と伝える方法があります。期待を残すために「参考にします」を使うより、決まっていることを言葉にする方が、相手は次の判断をしやすくなります。
具体的な助言へのお礼を返す
比較するときの視点を教えていただき、ありがとうございます。特に、利用できる時間帯を確かめるという点を参考にいたします。
役立った助言を一つ挙げている返事です。「参考になります」が必ず相手を低く評価する言葉になるわけではありません。どこが自分に役立ったかを示すと、助言への感謝として読みやすくなります。
相手の説明を理解しただけなら「ご説明ありがとうございます。確認する項目が分かりました」と答えられます。まだ試していない方法を「大変効果がありました」と言うなど、感謝を強めるために事実を先取りする必要はありません。
助言を全部取り入れられないときも、お礼は言えます。「今回は日程の点からA案を選びますが、次回の比較では教えていただいた条件も確認します」と、採否と感謝を分けられます。
返事を受け取った側は、採否を決めつけない
ご確認ありがとうございます。採用の可否について、いつ頃お返事をいただけそうでしょうか。
正式な回答が必要なのに「参考にします」とだけ返ってきた場合は、次の判断を尋ねられます。「つまり不採用ですか」と迫るより、必要な返事を明確にする形です。
まだ感想を求めただけなら、その返事に採用の確約まで要求する必要はありません。提案を渡した側と受け取った側で、次に何を決めるかが共有されているかを確かめます。
資料を参考にすることと、それをそのまま第三者へ渡したり公開したりすることも別です。「参考にいたします」と返した一言で、再配布の承諾を得たことにはなりません。共有が必要なら、「関係者にも共有してよろしいでしょうか」と、行いたいことを具体的に確認できます。