読めそうで読めない漢字 / 第58回
「周到」は「しゅうとう」。用意周到は準備が多いこと?
「周到」は「しゅうとう」と読みます。準備や配慮が隅々まで行き届いている様子です。「用意周到な人」といえば、物を大量に用意する人というより、必要な点を見落とさず備えられる人を思い浮かべます。
「周」は周囲だけでなく行き渡る意味
「周」には、まわりという意味のほか、あまねく行き渡る、手抜かりがないという意味があります。「到」は至ることです。「周到」の字を合わせると、必要なところまで広く届いていることが分かります。
「用意周到」は「よういしゅうとう」と読みます。「周倒」ではありません。「到着」の「到」と同じ字を使います。「周到に準備する」「周到な計画」「配慮が周到だ」などの形で使えます。
「用意周到」は四字熟語ですが、必ず四文字で使わなければならないわけではありません。「周到な準備のおかげで、当日の変更にも対応できた」と書いても自然です。「準備が準備されている」といった重複ではなく、準備の行き届き方を説明しています。
用意が多いだけでは「周到」とは限らない
「周到」は、準備の量の多さではなく、必要なところに不備なく行き届いていることです。 雨具を何種類も持っていても、会場までの行き方を知らなければ、全体として用意周到とは言いにくいでしょう。
「雨天時の会場まで押さえてあり、実に用意周到だった」という文では、予定どおりにいかなかった場合にも備えています。「受付の手順だけでなく、迷った人への案内まで周到に準備されていた」なら、見落としやすいところまで考えられていたという評価です。
反対に、必要のない物まで大量に持ち込んで身動きしにくくなった場合は、「荷物が多い」「備えが過剰だった」といった説明が合います。「多いほど周到」という単純な関係ではありません。
「慎重」「入念」「綿密」との重なり
「慎重」は、軽々しく決めたり動いたりせず、注意深く考える態度です。慎重に考えていても、必要な用意がまだ済んでいないことはあります。「周到」は、配慮や準備が行き届いている状態に目を向けます。
「入念」は、念を入れて丁寧に行うことです。「入念に点検する」といえば点検の丁寧さが中心で、「周到に準備する」では準備の範囲まで含めた行き届き方が感じられます。「綿密」は、細部まで細かく行き届いていることです。「綿密な計画」と「周到な計画」は、同じ計画を異なる強調で述べられる場合があります。
この三語と周到を、互いに使えない範囲として分ける必要はありません。「入念な下調べを行い、周到に準備した」と書けば、調べ方の丁寧さが全体の備えにつながったと伝えられます。同じ意味の形容をいくつも重ねるより、実際の行動を示すと分かりやすくなります。
褒め言葉以外にも使われる
「用意周到な計略」という言い方もあります。ここでは計画のよさを道徳的に褒めているのではなく、抜け目なく準備されていることを述べています。「周到な隠蔽」のような文も、隠した行為を肯定する意味ではありません。
一方、相手の働きを褒めるなら、「周到なご準備、ありがとうございました」と書けます。さらに「予備の資料も用意してくださり、急な参加者にも対応できました」と続けると、どの配慮に感謝しているのか伝わります。
「この人は用意周到だ」という紹介も、「初めて来る人のために、駅からの写真付き案内を用意している」と行動を添えると人物像が具体的になります。ただ「慎重で、入念で、周到」と似た語を並べるより、その人の工夫が伝わります。
「周到に準備したが、想定外の変更があった」と書くこともできます。十分に備えたことは、すべてを予測できたという意味ではありません。周到さは、結果が必ず成功するという保証ではなく、必要な備えがよく行き届いていたという評価です。