間違えやすい日本語 / 第56回
「青田買い」と「青田刈り」、早めに人を採るのはどっち?
有望な学生を早いうちに確保することは、「青田買い」が本来の言い方です。 「青田刈り」と音が似ていますが、買うことと刈ることでは、稲に対してしている行為が違います。
実る前に買うか、実る前に刈るか
「青田買い」は、稲が成熟する前に収穫を見込んで買うこと。将来得られるものを見越して早く確保するという点が、人材の採用にたとえられています。
「青田刈り」は、まだ未熟な稲を刈り取ることです。「早い」という点は共通していても、将来の実りを待って買う行為とは違います。
各社が有望な学生の青田買いに動いている。
早い段階で将来性を見込み、確保しようとする意味なら、こちらが合います。
「青田刈り」も辞書にある理由
『デジタル大辞泉』は、「青田刈り」に「青田買い」と同じ意味も載せています。そのうえで、本来の言い方から外れた用法が広まったものだと補足しています。
つまり、「辞書に載っているか」という質問と、「由来や標準形に沿って自分が何を書くか」という質問は同じではありません。読み手が迷わない説明文にしたいなら「青田買い」を選べます。
なお、「青田刈り」という語そのものが存在しないわけではありません。農作業の意味で使われた文まで「買い」に直すと、行為を変えてしまいます。
人を評する比喩としての注意
採用される側の人に向けて「青田買いしました」と言うと、商品に見立てられた感じを受ける場合があります。採用動向を説明する記事と、本人に期待を伝える場面では、言い方を分けられます。
本人への言葉なら「今後の活躍を期待して、早い段階でお声がけしました」と具体的に伝えられます。正しい慣用句を選ぶことと、その場面で気持ちよく伝わることは、どちらも考えてよいのです。
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