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LINTO日本語の校正と推敲

間違えやすい日本語 / 第78回

「悪貨は良貨を駆逐する」は悪い人が勝つ話?比喩で使うときの注意

質のよいものが、質の悪いものに押されて見えなくなってしまう。そんな状況を「悪貨は良貨を駆逐する」と表します。

悪い人が一度勝った、というだけの話とは少し違います。「駆逐する」は、追い払うこと。良いものが居場所を失うところまで含めた言い方です。

もとは、使われる貨幣が偏る話

この言葉は「グレシャムの法則」と結び付いて知られています。金や銀の含有量が違う貨幣を、同じ額のものとして使える状況を考えると意味がつかめます。

貴金属を多く含む貨幣は手元に残し、含有量の少ない貨幣から支払いに回す。そうした選択が重なると、世の中を回るのは質の劣る貨幣ばかりになり、良い貨幣は流通から姿を消します。

良い貨幣そのものの価値がなくなった、という話ではありません。同じ額として通用するという条件の下で、使われ方に偏りが生まれるのです。

比喩では、何が何を追いやるのかを書く

たとえば「似たような粗雑な複製品が売り場を占め、丁寧に作られた品が置かれなくなった。悪貨は良貨を駆逐するような状況だ」と使えます。

ただし、安いものを「悪貨」、高いものを「良貨」と決める表現ではありません。値段の違いだけでは、品質の違いも、追いやられる関係も説明できません。

単に悪いものがあるのか、それによって良いものが押しのけられているのか。ここを確かめると、比喩が大げさになりすぎるのを防げます。人の争いに使う場合も、自分が気に入らない側を「悪貨」と呼ぶだけでは、事情が伝わりません。

なお、「悪銭身に付かず」は、不正に得た金などは結局手元に残らないという別のことわざです。「悪貨」と「悪銭」は似ていますが、前者は流通から良いものが消える話、後者は得た金が残らない話です。

参考:Precious.jp

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