正しい敬語 / 第80回
「ご存じですか」は上から目線?知っているかを失礼なく尋ねる
「ご存じですか」は、相手が知っているかを尋ねる敬語です。上司や年上の人に使っただけで、上から目線になるわけではありません。受け取られ方を左右するのは、何のために確認するのか、知らないという答えをどう扱うのかです。
「そんなこともご存じないのですか」と相手を試す文と、説明の重複を避けるための質問は違います。知識を評価する調子を加えず、必要な確認として尋ねられます。
説明の前に知っている範囲を確かめる
来月から予約方法が変わる件は、ご存じでしょうか。まだご案内が届いていなければ、変更点をご説明します。
質問の目的が分かる例です。知らないと言っても責められず、必要な説明を受けられることが伝わります。
「ご存じかとは思いますが」と前置きする言い方もありますが、相手が知っていると決め付けてよいとは限りません。特に初めて案内する内容なら、「予約方法の変更について、ご案内します」とそのまま伝える方が簡潔です。
相手が既に知っていた場合は、「ありがとうございます。では、今回の変更点だけ確認させてください」と続けられます。確認した後も最初から同じ説明を繰り返すと、知っているか尋ねた意味が薄くなります。
人との面識は「会ったことがあるか」も分ける
新しく担当になる山田をご存じでしょうか。まだお会いになっていなければ、この後ご紹介します。
名前だけ知っている場合と、直接会った場合を区別した質問です。「ご存じですか」には、その人をどの程度知っているのかまで含まれていません。
交流のある知人について話すなら、「山田さんとはお知り合いですか」と関係を尋ねられます。ただし、相手が答えたくない交友関係まで掘り下げる必要はありません。紹介に必要な範囲を確認すれば用件は果たせます。
「ご存じでいらっしゃいますか」も使える形ですが、いつもそこまで長くする必要はありません。知っているかを丁寧に尋ねるだけなら、「ご存じですか」で成立します。
「ご存じのはずです」は確認にならない
「担当ならご存じのはずです」「当然ご存じですよね」と言うと、知らないという返答をしにくくします。敬語が使われていても、確認より評価の意味が強くなります。
もし必要な情報が共有されていないなら、相手の知識を試すより、どの資料を見てもらう必要があるかを伝えられます。
今回の変更は、昨日の案内に記載しています。届いていない場合は再送しますので、お知らせください。
相手の見落としなのか、送信が届いていないのかは、最初から決め付けない文です。誰にでも理解してほしい重要な内容なら、「ご存じだと思うので省きます」とせず、要点を短く確認する方が行き違いを減らせます。
知っていることを前提に話したい場合も、「先日の打合せで共有した日程をもとに、ご相談します」と具体的な接点を示せます。
「知りません」と返すときは必要な説明を頼む
知らないときに、知っているふりをする必要はありません。
その変更は存じませんでした。受付の開始日を教えていただけますか。
お名前は存じ上げていますが、まだ直接お会いしたことはありません。
前者は情報、後者は人物についての返答です。知らない内容の全てを長く説明してもらうのではなく、知りたい点を続けると会話が進みます。
知っている場合も、「はい、昨日の案内で確認しました」と経緯を添えれば、相手が説明を繰り返さずに済みます。「ご存じですか」を尋ねる側と答える側の双方が、次に何を話せばよいか分かるやり取りにできます。