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LINTO日本語の校正と推敲

読めそうで読めない漢字 / 第53回

「汎用」は「ぼんよう」ではない?「専用」と比べると分かる意味

「汎用」は「はんよう」と読みます。「凡庸」の「ぼんよう」とは違う言葉です。「汎用の道具」といえば、一つの目的に限らず、いろいろな用途に使える道具を指します。ただし、何にでも使えて、どんな場合にも最適だという意味ではありません。

「汎」は「広く」に関係する漢字

「汎」には、広い、広く行き渡るという意味があります。「汎用」は広く用いること、また、そのように使えるものを表す熟語です。「凡」の字にさんずいが付いた形ですが、「凡庸」「平凡」と同じ「ぼん」で読むわけではありません。

「汎用性」は「はんようせい」と読みます。対象や用途を限定せず、広く使える性質のことです。「汎用性が高い」は、いくつもの場面に応用しやすいという評価になります。

これに対し「凡庸」は、特に優れたところがなく平凡であることです。「汎用的な表現」と「凡庸な表現」では、評価がまったく違います。前者は使える場面が広いこと、後者はありきたりで際立ったところがないことを述べています。音の取り違えだけで意味が変わる組み合わせです。

「専用」と比べると対象の広さが分かる

「汎用」は用途が広いことを表し、「万能」と同じ意味ではありません。 「汎用の収納ケース」なら、小物や文具など複数のものを入れられます。「眼鏡専用ケース」は、眼鏡という特定の対象に合わせて作られたケースです。

どちらが優れているかは目的によります。専用のものは特定の用途に合う形や保護機能を持ち、汎用のものは別の用途にも転用しやすい、という違いがあります。用途が広いから性能が低い、専用だから必ず高品質、とまでは言えません。

「複数の機種で使える汎用品を選んだ」という文なら、対応する対象が一つに限られていません。ただし「汎用品」と表示されていても、すべての機種との適合を約束したことにはなりません。具体的な対象は別に確認する必要があります。「汎用」の言葉だけから、無制限に使えると広げないことが大切です。

物だけでなく表現や方法にも使える

「この説明図は、会場が変わっても使える汎用的な構成にした」。固有の場所の情報を減らし、複数の場面に使えるようにしたという意味です。「汎用性の高い挨拶文を用意した」は、相手や時期が多少変わっても使える文を作ったということになります。

一方、「先日はありがとうございました」は広く使えても、何へのお礼なのかは伝えきれません。表現の汎用性が高いことと、今回の相手に十分な内容であることは別です。「先日は展示の案内をしてくださり、ありがとうございました」と具体化すれば、その場面に合うお礼になります。

「一つの作品だけでなく、別の資料にも使える汎用的な分類方法を考えた」という例では、方法の適用範囲を述べています。ここでも、あらゆる資料を無理なく整理できると保証しているわけではありません。

「汎用性が高い」の中身を添える

「汎用性が高く便利です」だけでは、読み手は自分の用途に合うか判断できません。「深さを変えられるため、文具から裁縫道具まで収納できる」のように、使える対象を挙げると意味が具体的になります。

文章や企画についても、「汎用化する」とだけ言うより、「固有名詞を外し、ほかの地域でも使える説明にする」と書くほうが、何を変更するかが分かります。使い回せる部分を増やすことで、逆に分かりにくくなる条件がないかも確認できます。

「汎用性」と「応用力」も同じではありません。汎用性は主に物や方法の使える範囲を表し、応用力は知識や経験を別の場面に使う力をいいます。「彼は汎用性が高い」と人を物のように評価するより、「いろいろな場面で経験を生かせる」と書けば、言いたい長所を自然に伝えられます。

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