正しい敬語 / 第124回
「恐縮ながら辞退します」で十分?誘いや役目を引き受けられない返事
「恐縮ながら辞退いたします」は、引き受けない意思を丁寧に伝える表現です。ただ、誘いや依頼への返事では、この一文だけでなく、声を掛けてもらったことへのお礼と、何を辞退するのかも添えると伝わりやすくなります。
断ることが決まっているなら、「難しいかもしれません」と可能性を残すより、受けられない旨を明確に伝えるほうが、相手は次の予定を立てられます。
「辞退」は引き受けることを遠慮する言葉
登壇の依頼、役職への推薦、選考の次の段階など、提示された機会を自分から断るときに使えます。「ご辞退させていただきます」と自分の行為に「ご」を付けるより、「辞退いたします」と簡潔に述べられます。
このたびは講演のお声掛けをいただき、ありがとうございます。あいにく当日は予定があり、今回は辞退いたします。
受けられない理由は、この程度でも伝わります。相手が日程を変えられる依頼なのかによって、その日の都合が合わないだけなのか、依頼自体を受けられないのかを分けて書きます。
単に都合の合わない食事の誘いなら、「残念ですが、その日は参加できません」で自然です。「辞退」を使えば常に丁寧になるというより、依頼や選考のような改まった場に合う言葉と考えられます。
役目を引き受けられないときの返事
委員へのご推薦をいただき、ありがとうございます。現在の予定では継続して出席することが難しく、誠に恐縮ですが、お引き受けできません。
役目を果たせる見込みがないことを、必要な範囲で説明しています。「私などにはもったいないお話で」と謙遜だけを述べると、励ませば引き受けてもらえると相手が考えるかもしれません。
能力について自分を過度に低く評価する必要もありません。「任期中の活動時間を確保できないため」と、判断に関わる事情を伝えられます。理由を詳しく話せないときは、「事情により、お引き受けすることができません」と意思を明確にします。
断った後で別の人を推薦する場合も、その人の承諾なしに「代わりに引き受けます」と約束しないようにします。「別の方をご紹介できるか、確認してみます」なら、確認前であることが分かります。
一度引き受けた後なら、おわびも必要
先日お引き受けした司会の件ですが、やむを得ない事情で出席できなくなりました。ご準備を進めていただいていたところ、大変申し訳ありません。
一度受けた依頼を撤回する場面では、「辞退いたします」だけだと、その後に必要な調整が伝わりません。引き受けた後に変わったことと、相手に掛ける迷惑へのおわびを述べます。
可能な対応があるなら、「作成済みの進行案は、本日中にお送りします」と、確実にできることを添えられます。実行できない代案を並べて、断りの印象だけを和らげる必要はありません。
まだ受けていない依頼を断る場合と、一度受けた約束を取り消す場合では、必要なおわびや連絡が変わります。 同じ「辞退」の一語で済ませず、それまでのやり取りに合わせます。
次の機会を望む場合だけ、その気持ちを書く
今回は参加を見送りますが、次回の開催が決まりましたら、ぜひご案内をいただけますと幸いです。
次は参加したいという気持ちがあるときに添えられる文です。今後も受けるつもりがないのに「またの機会にぜひ」と書くと、相手は再度声を掛けることになります。
反対に、今回の日程だけが理由なら、「別の日程でしたら、改めてご相談いただけますと幸いです」と範囲を示せます。相手が日程を変える必要はないと添えたいなら、「今回はどうぞ私の都合をお気になさらず、ご予定どおりお進めください」と伝える方法もあります。
断る返事を難しく感じても、結論を文末まで隠さないことが大切です。お礼、受けられない旨、必要な理由の順に伝えると、相手も落ち着いて受け止めやすくなります。