正しい敬語 / 第125回
「お役に立てず申し訳ありません」はいつ使う?助けられなかったときの返事
「お役に立てず申し訳ありません」は、相手の期待に応えられなかったことをわびる表現です。相談の答えが分からなかったときにも使えます。ただし、約束した仕事を果たせなかった場合は、何ができなかったかを具体的に伝える必要があります。
助けられなかったことを丁寧に伝えつつ、自分が分かる範囲や、確実に案内できることがあれば添えられます。
相談に答えられなかったとき
申し訳ありませんが、その資料の保管先は存じません。お役に立てず恐縮ですが、資料室にお問い合わせいただけますでしょうか。
知らないことを尋ねられた場面の返事です。分からないと伝えること自体は失礼ではありません。答えに自信がないのに断定すると、相手は誤った情報を頼りに動いてしまいます。
案内先も確かでないなら、「資料室で分かるかもしれません」と見込みを示すか、「確認先も分からず、申し訳ありません」と答えます。「あちらなら必ず分かります」と、確認していないことまで約束しないようにします。
相手が軽く尋ねただけなら、「すみません、私も分からないんです」で十分なこともあります。「お役に立てず、誠に申し訳ございませんでした」と大きく謝るかどうかは、相手が困っている程度や、それまでの依頼内容に合わせます。
探したけれど、見つからなかった場合
保管庫と記録簿を確認しましたが、お探しの冊子は見つかりませんでした。お力になれず申し訳ありません。
何をした結果なのかを添えると、相手は未確認の場所が残っているかを判断できます。「ありませんでした」だけでは、手元にないのか、探してもなかったのかが分かりません。
そのうえで別の方法を案内できるなら、「同じ内容を収録した別冊でしたら、閲覧できます」と補えます。ただし、依頼した物とは違うことを曖昧にせず、代わりに使えるかは相手に判断してもらいます。
ご希望の日時は満席で、ご予約を承れません。翌日の午後でしたら、空きがございます。
予約のような場面では、「お役に立てず」と抽象的に謝るより、受けられない条件と、提示できる選択肢を示したほうが話が進みます。残念な結果を、敬語の長さで埋め合わせる必要はありません。
約束を果たせなかった場合は具体的に謝る
本日中にお送りするとお約束した一覧が、まだ完成しておりません。お待たせして申し訳ありません。残りの確認を終え、明日午前10時までにお送りします。
自分が引き受けたことに遅れが出た場合、「お役に立てず申し訳ありません」だけだと、もともと好意で手伝うつもりだったようにも聞こえます。何が遅れていて、いつ対応できるのかを伝えることが必要です。
相談に応えられないことと、引き受けた約束を果たせないことは、謝る対象を分けて伝えます。 言葉の丁寧さだけを変えても、相手が必要とする情報は補えません。
新しい期限もまだ決められないなら、「明日午前10時までに、完了の見込みをご連絡します」と、連絡の約束を示せます。確実でない完成時刻を言い切らないようにします。
感謝されたら、できたことを受け取る
探し物は見つからなくても、相手が「調べてくださって助かりました」と言うことがあります。そのときに「いえ、何の役にも立っていません」と否定し続ける必要はありません。
そうおっしゃっていただき、ありがとうございます。今回は見つかりませんでしたが、確認した記録がお役に立てば幸いです。
相手の感謝を受け取りながら、結果を正確に伝えています。何かをできなかったからといって、調べた手間まで無意味だったと決めつけなくてよいのです。
今後も対応できるなら、「追加で分かったことがありましたら、ご連絡します」と添えられます。継続して調べる予定がないなら、軽い気持ちで「引き続き調べておきます」と約束しないことも、誠実な返事の一つです。