読めそうで読めない漢字 / 第66回
「懸念」は「けねん」。気になるだけで使ってよい言葉?
「懸念」は「けねん」と読みます。「けんねん」ではありません。気に掛かって、不安に思うことです。「開催時刻の変更を懸念する」といえば、変更によって何か困ったことが起きるのではないかと案じています。単に興味がある、という意味の「気になる」とは違います。
「懸」は心に掛けることにつながる
「懸」は、掛ける、掛かることに関係する字です。「念」は、思い、心に留めること。「懸念」は現代では、心に引っ掛かって不安に思うことを表す語として使われます。「懸案」は「けんあん」と読む一方、「懸念」は「けねん」なので、熟語ごとに読みを確かめる必要があります。
「懸念する」「懸念を抱く」「懸念が残る」「懸念される」などの形で使います。「懸念を感じる」も意味は通じますが、「懸念があります」「心配しています」と簡潔に書ける場面もあります。字の重なりだけで正誤を決めるのではなく、文全体の読みやすさで選べます。
古い文献では、執着や仏教に関わる別の意味に出会うこともあります。現代の案内やニュースなら、まず気掛かりや不安の意味で読むと内容を捉えやすいでしょう。
興味があるだけなら「懸念」ではない
「懸念」は、望ましくないことが起こるのではないかという気掛かりを表します。 「新しい展示の内容を懸念しています」と書くと、楽しみにしているのではなく、内容に心配があると伝わります。興味を表したいなら「関心があります」「どんな内容か楽しみです」と書けます。
「会場が遠くなり、参加者が減ることを懸念している」は自然です。「夕方の開催では、帰りの交通手段が限られる点に懸念がある」なら、何を気にしているかが具体的になります。
「懸念は的中した」という表現は、心配した事態が実際に起こった場合です。「懸念は杞憂に終わった」なら、心配するような結果にはならなかったということです。どちらも、懸念した時点で悪い結果が決まっていたわけではありません。
「懸案」は片づいていない問題
「懸案」は、解決されずに残っている問題です。「会場の確保は長年の懸案だ」といえば、具体的に解決すべき課題が続いています。「会場の確保に懸念がある」は、確保できるか不安があるという意味です。
同じ対象について両方を使える場合もあります。「懸案だった会場が決まり、開催への懸念が一つ減った」とすれば、未解決の課題が片づいたことで不安が減ったと分かります。問題そのものと、その問題を気に掛けることを区別できます。
「憂慮」も心配する意味で、懸念と重なります。「憂慮のほうが常に何段階も重い」と決めるより、声明のような改まった文か、具体的な気掛かりを挙げる文かで考えると使いやすくなります。「不安」は、対象がはっきりしない気持ちにも広く使えます。
「懸念があります」の後に理由を書く
提案に対して「懸念があります」とだけ返すと、相手は何を直せばよいのか分かりません。「入口が一つのため、終了直後に人が集中する点を懸念しています」と書けば、確認すべきことが具体化します。
さらに「退場の時刻を分けることはできますか」と続ければ、単に反対するのではなく、解消の相談になります。「懸念を払拭してください」とだけ求めるより、必要な説明や対応を挙げるほうが話が進みます。
「混雑が懸念されます」という受け身の形では、誰がそう考えているかを省いています。一般的な見通しとして使えますが、自分一人の推測を皆の共通認識のように見せないようにしたいところです。「昨年は終了時に列ができたため、今年も混雑するのではないかと考えています」と書けば、根拠と判断する側が分かります。気掛かりを表す語だからこそ、その対象を示すことが役に立ちます。