正しい敬語 / 第127回
「よろしくお願いします」への返事は同じ言葉でいい?依頼と挨拶を見分ける
「よろしくお願いします」への返事に、「こちらこそ、よろしくお願いします」と返しても問題ありません。初対面の挨拶や、これから付き合いが始まる場面によく合います。
ただし、相手の「よろしくお願いします」が具体的な依頼を結ぶ言葉なら、頼まれたことを受けたかどうかも伝えたいところです。同じ言葉を返すだけでは、対応してもらえるかが分からない場合があります。
初対面の挨拶なら「こちらこそ」
こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします。
自己紹介の最後に「よろしくお願いします」と言われたときの返事です。相手も自分も、これからよい関係を築きたいと伝えているので、「こちらこそ」が自然に合います。
「お願いいたします」とすれば少し改まった調子になりますが、普段の会話なら「こちらこそ、よろしくお願いします」で十分です。相手より長い敬語にしなければならない、と考える必要はありません。
紹介されたばかりなら、「山田と申します。こちらこそ、よろしくお願いいたします」と自分の名前も添えられます。相手がまだ自分の名前を聞いていないのに、返事だけで挨拶を終えないようにします。
依頼への返事には、引き受ける内容を
承知しました。修正した資料を、明日午前中にお送りします。
「資料の修正をお願いします。よろしくお願いいたします」という依頼への返事です。末尾の挨拶をそっくり返すより、何をいつまでにするかを書けば、依頼を受けたことが伝わります。
資料を受け取りました。内容を確認し、本日中に対応できるかお返事します。
すぐに引き受ける判断ができない場合は、受け取ったことと、返事をする見込みを分けます。相手の「よろしく」に押されて、「よろしくお願いします」とだけ返すと、引き受けたつもりがなくても承諾と受け取られるかもしれません。
挨拶には挨拶を、依頼には対応の返事を返すと、短い言葉でも用件が伝わります。 文末を丁寧に整える前に、相手が何の返事を待っているかを確かめます。
予定や引き継ぎを確定する返事
当日は午後1時に伺います。こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします。
日程を調整した後、「当日はよろしくお願いします」と連絡をもらった場合の返事です。訪問する予定を添えているため、日程を確認したことも分かります。
引き継ぎの挨拶なら、「来週から私が窓口を担当いたします。引き続きよろしくお願いいたします」と、自分の役割を示せます。前任者への挨拶なのか、後任者が対応を引き受けた返事なのかが曖昧になりません。
これまでの経緯は共有を受けております。今後のご連絡は、こちらのメールアドレスで承ります。
こんな一文を添えれば、新しい窓口を利用する相手の不安も減ります。「よろしく」だけに全てを含めず、連絡先や担当の範囲が変わるなら、その情報を別に伝えます。
返事を重ねるか迷ったとき
既に必要な確認が済み、相手が「それでは、よろしくお願いします」と締めたメールには、必ずもう一通返さなければならないわけではありません。お互いに同じ挨拶を送り続ける必要はないでしょう。
ただし、自分から送るべき返事が残っているなら、挨拶だけと決めつけないようにします。「この内容で進めてよいですか。よろしくお願いします」なら、進めてよいかを答える必要があります。
短い連絡ツールでは、「承知しました。明日よろしくお願いします」と一度返すと、読んだことを示せます。普段のやり取りや、相手が受領確認を必要としているかによって選べます。
断るときにも、「よろしくお願いします」を機械的に返す必要はありません。「申し訳ありませんが、明日までの対応は難しい状況です。金曜まででしたら対応できます」と、受けられる条件を明確に伝えます。丁寧な挨拶は、その返事の後に添えれば十分です。