読めそうで読めない漢字 / 第107回
「確執」は「かくしつ」。一度のけんかでも使える言葉?
「二人の間には確執がある」。この表現を読むと、単に一度口げんかをしたというより、互いに譲れないものが残っているように感じます。「確執」は「かくしつ」と読み、意見を強く主張して譲らないことや、それによって生じる不和を表します。
ニュースや人物評でも見かける語ですが、誰かの関係に使うときは、伝わる意味の重さを知っておきたいところです。
「確執」は互いに譲らないこと。「かくしゅう」の読みも
「確」には、しっかりしているという意味があり、「執」には、こだわって離さないという意味があります。「確執」は自分の意見を強く保ち、相手に譲らないことに関わる語です。
現在よく目にする読みは「かくしつ」ですが、辞書には「かくしゅう」も載っています。「執着」の「執」は「しゅう」、「執筆」の「執」は「しつ」と、同じ字でも語によって読みが異なります。「確執」も一つの読みだけが歴史を通じて使われてきたわけではありません。
用例なら、「進め方をめぐって二人の間に確執が生じた」「長年の確執がようやく解けた」などが挙げられます。意見の違いに加えて、人間関係の不和が伝わりやすい表現です。
一度反対しただけで「確執がある」と言える?
会議で二人が違う案を出したとします。一人は春の開催を、もう一人は秋の開催を提案した。それだけなら、意見の相違です。二人が互いの事情を聞き、どちらかに決めたなら、関係が悪くなったとは限りません。
「開催時期をめぐり、二人に確執が生じた」と書くと、意見の違いから不和に至ったという説明になります。元の出来事より強い意味を付け加えていないか、確認が必要です。
「確執」は、何回争えば成立するという回数の決まった語ではありません。一度の深い対立から不和が生じることもありますし、何度意見が違っても良い関係を保つこともあります。回数より、互いに譲らない状況や関係のこじれを述べているかが大切です。
「対立」「不仲」「確執」の違い
似た言葉でも、何に焦点を当てるかが変わります。
| 言葉 | 主に述べること | 例 |
|---|---|---|
| 意見の相違 | 考えが一致していない | 二人は費用の考え方が違う |
| 対立 | 立場や主張が相いれない | 実施するかどうかで対立した |
| 不仲 | 仲が良くない | 二人は以前から不仲だ |
| 確執 | 譲らない主張や、そこから生じる不和 | 方針をめぐる確執が続く |
「対立」は、必ずしも個人的な嫌悪を意味しません。「不仲」は仲の悪さを述べますが、その理由が意見の違いなのか、別の事情なのかまでは示しません。
「確執」を使うと、その場限りの違いでは片付かない関係を思い浮かべやすくなります。「二人が別々の席に座っていた」だけで確執を推測するなど、見えた行動から関係を飛躍して判断しないようにしたいものです。
「確執が解けた」と書くには、何が変わったのか
「確執が解けた」は、不和やわだかまりが解消したことを伝えます。ただ、同じ場に出席したことだけで、関係が修復したとまでは言えません。
「二人は話し合い、今後の進め方で合意した」と書けば、確認できた変化が具体的に伝わります。「以前は意見が対立していたが、今回の案では協力した」なら、過去と今回の状況を分けられます。
小説では「父との確執」という短い表現が、人物の背景を示すこともあります。一方、実在する人についての報告では、本人の発言や確認できる事情に即して書く必要があります。印象の強い語だからこそ、「何が起きたか」を言葉の下に置いておくと、文章の確かさが変わります。