間違えやすい日本語⑤:「うがった見方」「他山の石」「情けは人のためならず」の正確な意味とは?
慣用句やことわざは、一語の言葉と違って、意味を確かめ直す機会がほとんどありません。学校で習うのは数が限られていますし、大人になってから「他山の石」を辞書で引く人は、まれでしょう。耳で覚えて、前後の雰囲気で意味を推し量る。その繰り返しのうちに、もとの意味とそっくり逆の意味が、いつのまにか居ついてしまうことがあります。
今回の3つは、そうやって裏返った言い回しです。おもしろいのは、3つとも、字をそのまま読み直せば、もとの意味にたどり着けることです。「穿つ」は掘り抜く、「他山の石」はよその山の石、「ならず」は「ではない」。字面に戻るだけで向きが直るので、この回では向きだけを押さえて、細かい事情は語ごとの記事に預けます。
「うがった見方」は、勘ぐりではなく掘り抜いた見方
「うがった見方はやめよう」。会議でこう言われて、勘ぐるなという意味だと受け取らない人は、いまはまずいないと思います。けれど「穿つ」は穴を掘り抜くことで、辞書の「うがった見方」は物事の本質を突いた見方。勘ぐりどころか、むしろ褒め言葉の側にある言い回しです。褒めたつもりが相手を硬くさせる、というすれ違いが起きるのはそのためです。
「うがちすぎ」との混同や、川柳の持ち味としての「うがち」の話は、「うがった見方」の本来の意味で。
「他山の石」は、お手本ではなく「よその山の粗い石」
「先輩の仕事ぶりを他山の石にします」。感謝を込めたつもりの一言が、言葉の上では先輩を「よその山の粗い石」にたとえています。他山の石は、他人の誤りや失敗も自分を磨く助けになるというたとえで、引き合いに出すのは砥石代わりの石であって、立派な玉のことではないからです。目上の人に向けると、褒めたつもりで失礼になります。
もとになった「詩経」の一節と、「反面教師」との距離の取り方は、「他山の石」の意味と使い方にまとめました。
「情けは人のためならず」は、突き放しではなく親切のすすめ
こちらは、末尾の四文字の読み方で意味が裏返ることわざです。「ならず」を「〜にならない」と読めば、「情けはその人のためにならない」という戒めに聞こえます。けれど文語の「ならず」は「〜ではない」。「一度ならず二度までも」の「ならず」と同じです。情けは人のためのものではない、巡り巡って自分に返ってくるのだから、惜しまず親切にしておきなさい、という教えになります。
「ならず」の読み下しと、なぜ逆の読みが広まったのかの推測は、「情けは人のためならず」の意味でどうぞ。
まとめ:正誤早見表
| 言葉 | よくある誤解 | 本来の意味 |
|---|---|---|
| うがった見方 | 疑ってかかる、ひねくれた見方 | 物事の本質を捉えた見方 |
| 他山の石 | 他人の良い言行を手本にする | 他人の誤った言行も自分を磨く助けになる |
| 情けは人のためならず | 情けはその人のためにならない | 情けは巡り巡って自分に返ってくる |
出典:文化庁「国語に関する世論調査」 平成12年度 / 平成23年度 / 平成25年度
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この連載の記事
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