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LINTO日本語の校正と推敲

読めそうで読めない漢字 / 第78回

「悍ましい」は何と読む?怖いだけではない強い嫌悪の言葉

「悍ましい」は「おぞましい」と読みます。ぞっとするほど嫌な感じがすることです。「おぞましい話」といえば、怖いだけでなく、聞きたくない、受け入れがたいという強い嫌悪が含まれます。単なる「苦手」の代わりに使うには強い言葉です。

「怖い」だけでは説明しきれない意味

「おぞましい」は、ぞっとするほどの強い嫌悪を表します。 「高い橋から下を見るのは恐ろしい」は、高さに対する恐怖です。それを「おぞましい」と言うと、橋や光景自体に強く嫌な感じがあるという意味が加わります。

「人の弱みにつけ込む手口に、おぞましさを感じた」という例なら、単に身の危険を恐れているのではなく、行為のあり方に強い嫌悪を覚えています。「事件を扱う小説で、登場人物の考えのおぞましさが次第に明らかになる」という紹介もできます。

この語が表すのは、対象に向けた強い否定的な感情です。読み手を驚かせるためだけに使うと、出来事を必要以上に刺激的に見せたり、人への攻撃を強めたりすることがあります。

「悍」の字と古い意味

「悍」には、たけだけしい、気が強いという意味があります。「悍ましい」は、古い文章では強情さや、たけだけしく恐ろしい様子を表す用例もあります。現代で中心となる、ぞっとするほど嫌な感じという意味だけでは読めない箇所があるのは、そのためです。

同じ字を使う「精悍」は「せいかん」と読み、顔つきや態度に鋭く力強い感じがあることです。「精悍な顔つき」と「おぞましい顔つき」では評価が異なります。漢字が共通しているから、熟語全体も同じ印象になるとは限りません。

一般向けの文章では「おぞましい」と平仮名で書いても自然です。漢字の難しさで怖さを増す必要はありません。表記を変えても、言葉の持つ強い嫌悪感は変わりません。

「不気味」「恐ろしい」と使い分ける

「不気味」は、正体が分からず、気味が悪い感じを表します。「誰もいない家から音が聞こえて不気味だ」なら、何が起きているのか分からない不安があります。「おぞましい」では、その対象に対する嫌悪がより前に出ます。

「恐ろしい」は、危険や強さ、起こる結果などを怖いと感じることです。「台風の勢いが恐ろしい」は自然ですが、「台風の勢いがおぞましい」とすると、恐怖だけでなく嫌悪を強く含む、独特な言い方になります。

「不快」は、嫌な気持ちになることを広く表せます。「その表現は不快だった」は、自分の受け止めを伝える比較的一般的な言い方です。「その表現はおぞましかった」なら、拒絶の程度がかなり強くなります。どの言葉も同じ「嫌だ」に置き換えられる場面はありますが、強さと中身は同一ではありません。

人そのものへの評価に広げない

「その発言におぞましさを感じた」と「あなたはおぞましい人だ」では、非難の対象が違います。前者は発言、後者は人格全体です。表現を批判したいだけなのに、人の存在そのものを強く否定する形に広げないようにできます。

具体的に伝えるなら、「被害を受けた人を笑いものにする表現は受け入れられません」のように、問題のある行為を示すことができます。「おぞましい」の一語で強く反発するより、何が問題なのかを読み手が理解しやすくなります。

作品紹介では「おぞましい場面がある」とだけ書くと、残酷さなのか、人物の心理なのか、異様な光景なのかが分かりません。「人を平然と利用する人物の心理が描かれる」と説明すれば、読み手は内容を想像できます。言葉の読みを知ることに加え、何に対する嫌悪を述べているのかを確かめると、強い語感に流されず文章を読めます。

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